■素数がもたらしたもの(その1)

【1】オイラーの定数

  Hn =1/1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/n

と定義します.(n>1ならばHn は整数にはなりません.)

 nを無限大にしたとき,調和級数

  H∞= 1/1+1/2+1/3+1/4+・・・

は発散しますが,そのn次部分和Hnは離散的な世界で連続関数lnnに対応するものであり,自然対数は双曲線y=1/xの下の面積として定義できます.

 したがって,双曲線y=1/xを上と下から棒グラフではさんで近似することにより,lognとlogn+1の間に押し込まれまれることがわかります(∵∫1/xdx=logx).

 したがって,Hn とlognの比{Hn /logn}は

  Hn /logn→1   (n→∞)

です.

 一方,Hn とlognの差{Hn −logn}は確定した極限値γに収束します.

 Hn −logn→γ   (n→∞:Hn =logn+γ+O(1/n))

             (n→∞:Hn =logn+γ+o(1))

 この極限値はオイラーの定数として知られており,約0.57722になります.オイラーの定数の比較的よい近似値は4/7で,さらによい近似値は41/71で与えられます.

 Hn は上限と下限の間の約58%のところにあることがわかりましたが,今日に至るまで,オイラーの定数の値は有理数とも無理数ともわかっていません.おそらく,超越数なのでしょう.

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【2】素数が無限に存在すること(オイラーによる証明)

 素数が無限に存在すること・√2が無理数であることは,ギリシア数学のなかでも有名な定理です.それぞれユークリッドとピタゴラスが背理法を用いて証明していますが,その証明はだれしもが容易に理解できるものです.同様に,調和級数Σ(1/n)が無限大に発散すること

  1/1+1/2+1/3+・・・=∞

も容易に示すことができます.

 それでは,素数の逆数の和

  Σ(1/p)=1/2+1/3+1/5+1/7+1/11+・・・

は有限でしょうか?

(証明)

 調和級数1/1+1/2+1/3+・・・は,オイラー積表示すると

  Π(1−1/p)^-1

と書けますから,

  Π(1−1/p)^-1〜∞.

 また,

  logΠ(1−1/p)=Σlog(1−1/p)

1/pが非常に小さいとき,マクローリン展開より,

  Σlog(1−1/p)〜−Σ(1/p)

ですから,

  Σ(1/p)=∞

になります.したがって,すべての素数の逆数の和は発散することが示されます.

 1737年,オイラーは素数の逆数の和が無限大になることを見つけました.このことから,素数が無限個あることはかんたんにわかります.また,調和級数Σ(1/n)は発散し,また,オイラー級数Σ(1/n^2)=π^2/6で収束しますから,素数は平方数ほどまばらには分布していないこともわかります.

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【3】素因数の個数の近似値(ハーディーとラマヌジャン)

 さらに,このことを詳しく調べると,

  Σ(1/p)〜log(logx) (pはp≦xの素数を動く,証明略)

などがわかってきます.log(logx)は1/(xlogx)の原始関数です.

 Σ(1/p)はxに近い整数について,その素因数の個数の近似値を与えるもので,ハーディーとラマヌジャンにより明らかにされています.

  12=2×2×3・・・素因数は3個

  14=2×7・・・素因数は2個

  16=2×2×2×2・・・素因数は4個

素因数の数はloglognにほぼ等しい.

 なお,素数の逆数の和Σ(1/p)については

  lim{Σ(1/p)−loglogn}→0.26149・・・

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