■タンパク質の形

 タンパク質には多くの種類があり,その働きにあった姿・形をしている.たとえば,膜を貫通して小さな分子を輸送するタンパク質は真ん中にトンネルをもっていて,まるで分子機械と呼びたくなるような形状である.

 タンパク質はアミノ酸が連なった高分子であるが,アミノ酸には20種類あり,それらがどのように連なっているかによって,タンパク質の姿・形のみならず、機能が決まってくる.

 アミノ酸の1次元配列が決まると,2次構造(αヘリクス,βシートなど)→3次構造→4次構造を形成するのであるが,この階層形成に対して,物理学はストレートな答えをまだ与えることはできていない,すなわち(10−20アミノ酸程度ならばともかく)アミノ酸配列から立体構造を予測できない.

 コンピュータの計算能力が問題の計算量に追いつかないからである.ドクターGに訊いたところによると,近年の計算プログラムはニュートン力学に量子力学の効果が加味されるようになっているので,なおさらなのである.

 それで多くの場合はすでに立体構造のわかっているタンパク質のアミノ酸配列をデータベース化して,経験則的に立体構造を予測しているのである.最近は多くのデータベースがあるので,かなりの予測が可能になっているが,それでも予測精度は高くはない.

 将棋ソフトがプロ棋士を負かすようになったのも同様のアプローチによる.これはある意味,現状を把握した正しいアプローチであるが,問題に対する真の物理的理解には繋がらない手法でもある.それにしてもドクターGはいま何をしているのだろうか?

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