■メビウスの帯上のコインの問題  (中川 宏)

あるコインが他のコインの外側を回る場合には、

回られる図形の周長:A

回る図形の周長:B

回転数:K

とすると、

  Ko=(A+B)/B

他方、ある図形が他の図形の内側を回る場合は

Ki=(A−B)/B

となることがわかった。

では、内側と外側の区別がはっきりしない「メビウスの帯」の上をコインが回るときには何回転するのだろうか?

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まず、コインの周長の2倍の長さのメビウスの帯(1回ひねり)の上を回る場合を試してみた。すると、1周したときには出発点の裏側に位置し半回転していた。もう1周して出発点に戻ってきたときには1回転していた。

ただし、メビウスの帯には自由度があるので力を加えて、出発点と反対側の位置(コインの周長だけ移動したところ)を出発点と同じ向きにすることは可能である。その時には、その位置で1回転しているともいえるが、残りの4分の3行程かけてもう1回転するというのも変な話なので、出発点と同じ向きの位置はないものとして考えることにしたい。

つぎに、メビウスの帯の長さをコインの周長の4倍にしてみた。この時も1回転しかしなかった。

今度は2倍の長さのメビウスの帯のひねりを2回にしてみた。2回ひねったメビウスの帯には、外側と内側の区別があり、コインの周長と同じ長さの周長をもつ円が2つつながったようなかたちになる。

この帯には出発点から帯の長さの半分のところに同じ位置があり、コインが帯の外側を回る場合には、そこまでで2回転、1周して出発点に戻ってきたときには4回転していた。

コインが帯の内側を回る場合には、回転しなかった。

この結果は、同じ大きさの円が外側を2周、内側を2周するのと同じとみなすことができるので、メビウスの帯を偶数回ひねる場合はこれ以上検討することはしない。

もういちど一回ひねりのメビウスの帯に戻る。

さきほどコインが「1周したときには出発点の裏側に位置し半回転していた」といったが、よくよく観察してみると、半回転しているのは、コインの面に含まれる軸に対してであって、これまで前提としてきたコインの面に垂直な軸に対しては、回転していない、もっと詳しく言うと時計回りに半回転したのちに、反時計回りの半回転して、差し引きゼロになっていることがわかる。さらに出発点の裏側からもう1周する間にも同じことが起きる。

結局、コインの周長の2倍の長さの1回ひねりのメビウスの帯の上を回る間にコインは、コインの面に含まれる軸に対しては1回転するが、コインの面に垂直な軸に対しては、回転しないということである。

また、コインの周長の5/2倍(一般に1/2の奇数倍)の長さの1回ひねりのメビウスの帯の上を回る間にコインは、

コインの面に含まれる軸に対しては2回転するが、

コインの面に垂直な軸に対しては、回転しない

こともわかった。

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