■直交多項式入門(その1)

 直交関係

  ∫(0,π)cos(kx)dx=0,∫(0,π)sin(kx)dx=0,

  ∫(0,π)cos(ix)cos(jx)dx=0,

  ∫(0,π)cos^2(kx)=π/2,

  ∫(0,π)sin(ix)sin(jx)dx=0,

  ∫(0,π)sin^2(kx)dx=π/2,

  ∫(0,π)sin(ix)cos(jx)dx=0

 三角関数の重要な性質として「直交性」があります.直交性をもつ関数は三角関数ばかりではなく,一般に,

  積分の形が0になる式,∫φi(x)φj(x)dx=0

なる性質をもっている関数が直交関数です.直交関数も三角関数の1種といえるかもしれません.

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【1】ルジャンドル直交多項式

 ルジャンドルの直交多項式は水素原子の周りを回る電子の角運動量を表わす波動方程式として登場したもので,球対称性をもつ体系について偏微分方程式を解く際には必ずというほど登場する基本的な直交多項式です.そのため,三角関数が円関数と呼ばれるのに対し,ルジャンドルの多項式は球関数とも呼ばれます.

 簡単に解説すると,母関数(1−2xt+t^2 )^-1/2をtのべき級数に展開したときのtj の係数がルジャンドル多項式であり,

  (1−2xt+t^2 )^-1/2=Σφj(x)tj

ですから,

  φ0(x)=1,

  φ1(x)=x,

  φ2(x)=(3x^2 −1)/2,

  φ3(x)=(5x^3 −3x)/2,

  φ4(x)=(35x^4 −30x^2 +3)/8,

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・,

  φn(x)=1/(2n ・n!)d^n/dx^n(x^2 −1)n

で表わされます(ロドリーグ(Rodrigues)の公式).ここで,φn(x)はxの2n次の多項式をn回微分しますからxのn次式になり,n次のルジャンドル多項式と呼ばれます.

 ルジャンドル多項式は,

  φm φn =0   (m≠n:直交性)

  (n+1)φn+1 −(2n+1)xφn +nφn-1 =0   (漸化式)

なる性質をもち,これらはφ0 およびφ1 から,漸化式

  φn+1 =(2n+1)/(n+1)xφn −n/(n+1)φn-1

を使って順に作っていくことができます.

 ルジャンドルの多項式は区間[−1,1]で定義されるものですが,xについての区間[a,b]で与えられる関数は,変数変換x=(b+a)/2+(b−a)/2tによって,tについての区間[−1,1]に容易に変換することができます.ルジャンドルの多項式は角運動量の量子化に用いられるなど,量子力学で非常に重要な役割を演じています.

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