■円の循環定理(その8)

 (その7)で「平面を4直線で分割すると,11個の領域ができる」ことを述べたが,この問題は高校の数学でよく取り上げられる問題である.

===================================

【1】平面をn本の線で分割する.その際,分割によってできる領域が最も多くなるようにする.最大分割領域数Snはいくつになるか?

 分割される領域数が最大になるためには,新しい線を引くとき,それ以前のすべての線と新しい交点で交わるようにします.既存の交点を通ると分割される領域が最大数にならないからです.

  S0=1,S1=2,S2=4,S3=7

はすぐに求められます.

  S0=1  (全平面)

  S1=2=S0+1  (平面は半平面に2分割される)

  S2=4=S1+2

  S3=7=S2+3

 このことからn本目の線を引くと新しい領域がn個増えることがわかります.これを式で表すと

  Sn=Sn-1+n

  Sn=Sn-1+n

  Sn-1=Sn-2+n−1

  ・・・・・・・・・・

  S1=S0+1

  S0=1

を辺々加えると,一般式

  Sn=1+(1+2+3+・・・+n)=1+n(n+1)/2

    =(n^2+n+2)/2

が得られます.

  S0=1,S1=2,S2=4,S3=7,

  S4=11,S5=16,S6=22,・・・

と続くというわけです.

===================================

【2】平面分割の二項係数表現

  Sn=1+n(n+1)/2=1+(n+1,2)

としたくなりますが,さらに

  1=(n,0)

  (n+1,2)=(n,1)+(n,2)

ですから,

  Sn=(n,0)+(n,1)+(n,2)

が得られます.

===================================

【3】空間分割の二項係数表現

(問)直線をn個の点で分割する.その際,分割によってできる領域が最も多くなるようにする.最大分割領域数Snはいくつになるか,の答は

  Sn=(n,0)+(n,1)

(問)平面をn本の線で分割する.その際,分割によってできる領域が最も多くなるようにする.最大分割領域数Snはいくつになるか,の答は

  Sn=(n,0)+(n,1)+(n,2)=(n^2+n+2)/2

  S0=1,S1=2,S2=4,S3=7,

  S4=11,S5=16,S6=22,S7=29,

  S8=37,S9=46,S10=56,・・・

(問)空間をn枚の平面で分割する.その際,分割によってできる領域が最も多くなるようにする.最大分割領域数Snはいくつになるか,の答は

  Sn=(n,0)+(n,1)+(n,2)+(n,3)=(n3+5n+6)/6

  S0=1,S1=2,S2=4,S3=8,

  S4=15,S5=26,S6=42,S7=64,

  S8=93,S9=130,S10=176,・・・

 一般に,

(問)m次元空間をn枚の超平面で分割する.その際,分割によってできる領域が最も多くなるようにする.最大分割領域数Snはいくつになるか,の答は

  Sn=(n,0)+(n,1)+(n,2)+(n,3)+・・・+(n,m)

となるが,これらの問題は二項係数で表現するときれいなパターンになる.

===================================

(問)1つの円をn本の弦で分割する.その際,分割によってできる領域が最も多くなるようにする.最大分割領域数Snはいくつになるか?

 実はこの問題は

(問)平面をn本の線で分割する.その際,分割によってできる領域が最も多くなるようにする.最大分割領域数Snはいくつになるか

と等価になる.

  Sn=(n,0)+(n,1)+(n,2)=(n^2+n+2)/2

(問)1つの球をn個の面で分割する.その際,分割によってできる領域が最も多くなるようにする.最大分割領域数はいくつになるか?

 この問題も

(問)空間をn枚の平面で分割する.その際,分割によってできる領域が最も多くなるようにする.最大分割領域数Snはいくつになるか

に等価で,答は

  Sn=(n,0)+(n,1)+(n,2)+(n,3)=(n3+5n+6)/6

 新しくナイフを入れて増加する3次元領域の数は,新しい平面上にそれがそれまでの平面と交わってできる2次元領域の数に等しいからである.

 立方体にナイフを6回入れる場合は27個の小さい立方体を作ることができるが,形にこだわらなければ最大42個の断片にできるというわけである.

===================================