■円の循環定理(その4)

【1】散乱理論と逆問題

 ものの構造を調べるのに,ある方向からX線などを当ててそれがどの方向にどれだけ出てくるかをみて,これをいろいろな方向から調べると内部の様子をある程度類推することができます.このときどのように類推できるかを数学的に研究する分野は散乱理論と呼ばれています.散乱理論の成果は,たとえば人体の内部の様子を探るCTスキャンなど,幅広く応用されています.

 逆問題は工学や医学など様々な面に現れ,実用上大切な問題ですが,数学的にはまだ十分解明されていない問題であるといえます.

 たとえば,弾丸が物体にあたって反射した際の散らばり方から物体の形を調べることは散乱論の基本的な問題ですが,この場合,物体の形を決めることは必ずしも可能ではありません.

 そのような例として,「ペンローズの茸」と呼ばれる障害物をもつ楕円状物体が知られています.ペンローズの茸では弾丸が入り込めないポケットがあり,弾丸の軌跡はその情報をもち得ないのです.

[補]焦点の間を通る光線が反射すると,同じ焦点の間を通る光線となるので,どんな光線もポケット状の領域には入り込めない.ポケット状の領域には光は届かないし,その逆に進むこともできないんである.

 それでは,物体に当てるものとして,弾丸の代わりに波を用いたらどうなるのでしょうか? すなわち,波を物体に当てて,散らばった波の遠方での挙動を調べることによって物体の形を調べるという問題です.

 この場合,△f=0でなく,

  □u=0

が成り立ちますが,実はこの解の振る舞いを調べると物体の形を決定できることが知られています.ペンローズの茸のような物体に対しても,入射した波は回折によって障害物の裏側のすみずみまで入り込み,そこの情報をもって外に出てくるというわけです.

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【2】焦点を共有する2次曲線

[1]任意の2点を与えると,これを焦点とする無数の楕円および双曲線が描ける.このとき,任意の楕円と双曲線は直交する.

  x^2/(a^2+λ)+y^2/(b^2±λ)=1

[2]任意の1点とそれを通る直線を与えると,これを焦点対称軸とする無数の放物線が描ける.このとき,向きが異なる任意の放物線は直交する.

 焦点を(e,0)とし,x軸に垂直な準線をもつ放物線族の方程式は

  y^2=(e+λ)(x+λ)

となる.

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【3】焦点を共有する2次曲面

[1]楕円面と一葉双曲線と二葉双曲面は直交曲面をなす.

  x^2/(a^2+λ)+y^2/(b^2+λ)+z^2/(c^2+λ)=1

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