■ワイソフ計量空間(その18)

 (特殊型を除く)n次元準正多胞体には多くの種類があるが,その中には重要な3つのクラスが存在すると考えられる.まず,それらの製作法を考えると

  正単体切頂型(2(n+1)胞体)

  正軸体切頂型(2^n+2n胞体)

  正単体切頂切稜型(2(2^n−1)胞体)

  正軸体切頂切稜型(3^n−1胞体)

の4クラスの分類されるが,このうち,正単体切頂型はあまり重要な性質を持ち合わせおらず,残りの3つが重要となる.

            単独空間充填多面体  単純ゾノトープ

  正単体切頂型        ×         ×

  正軸体切頂型        ○         ×

  正単体切頂切稜型      ○         ○

  正軸体切頂切稜型      ×         ○

 とくに,n=3のとき,空間充填2(2^n−1)胞体と空間充填2^n+2n胞体は同形(切頂八面体)になることを注意しておく.切頂八面体はすべての次元を通じて唯一,空間充填2(2^n−1)胞体かつ空間充填2^n+2n胞体という性質をもつ多面体である.このことは3次元平行多面体の元素数が1であることと密接に関係している.

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【1】特殊な次元

 正多胞体は鏡映(反転)すると合同になる単体群に分割される.それが基本単体である.正単体では(n+1)!個,正軸体・立方体では2^nn!個の基本単体に分割される.

 n次元正単体の基本単体数は(n+1)!,n次元正軸体(立方体)の基本単体数は2^n・n!であるが,3次元空間は

  2^n+2n=2(2^n−1)

に加え,

  2^n・n!=2(n+1)!

が等しくなる特殊な次元である.

 さらに,切頂単体と正軸体のファセット数が等しくなる

  2(n+1)=2^n

のも,n=3である.

 また,3次元と4次元では標準型の正多面体のほかに,散在型正多面体が存在するが,

  2(n+1)=12,20,24,120,600

  2^n+2n=12,20,24,120,600

を調べると,n=4のとき,

  2^n+2n=24

が成り立つ.

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【2】多面体の重複

 3次元の正四面体系と正八面体系,4次元の正16胞体系と正24胞体系の準正多胞体に重複が存在する.

  {3,3}(0,1,0)≡{3,4}(1,0,0)

  {3,3}(1,0,1)≡{3,4}(0,1,0)

  {3,3}(1,1,1)≡{3,4}(1,1,0)

  {3,3,4}(0,1,0,0)≡{3,4,3}(1,0,0,0)

  {3,3,4}(1,0,1,0)≡{3,4,3}(0,1,0,0)

  {3,3,4}(1,1,1,0)≡{3,4,3}(1,1,0,0)

 3次元と4次元で重複が存在する理由は,正四面体(正16胞体)の辺の中点を結ぶ(切頂する)と正八面体(正24胞体)ができるからである.

  {3,3}(0,1,0)≡{3,4}(1,0,0)

  {3,3,4}(0,1,0,0)≡{3,4,3}(1,0,0,0)

 3次元の場合,正四面体を切頂してさらに切稜することは,正八面体を切頂することと等価である.切頂八面体系は全部で4種類あるが,

  {3,4}(0,1,0)≡{3,3}(1,0,1)

  {3,4}(0,0,1)→重複しない

  {3,4}(1,1,0)≡{3,3}(1,1,1)

  {3,4}(0,1,1)→重複しない

 4次元の場合,正16胞体を切頂してさらに切稜(切面)することは,正24胞体を切頂(切稜)することと等価である.しかし,(結果的に?)正24胞体を切頂かつ切稜した図形は重複しないので,ここでは,切頂24胞体系3種類について考える.

  {3,4,3}(0,1,0,0)≡{3,3,4}(1,0,1,0)

  {3,4,3}(1,1,0,0)≡{3,3,4}(1,1,1,0)

  {3,4,3}(0,1,1,0)→重複しない

 このことから,n(≧5)次元の正単体系と正軸体系の準正多胞体に重複はないと思われる.正単体の頂点数n+1とファセット数n+1の合計2(n+1)が正軸体の頂点数2nやファセット数2^nと一致しないからである. 実際,5次元以上の空間ではそのような例は知られていない.

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