■似ているような似ていないような(その2)

 かつての同僚K氏とのメールのやりとりである.

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K:もうご存知かもしれませんが,最近,慶応大学の近藤誠医師の「がんもどき理論」というのを面白く読みました.おおよそですが,

[1]癌は本物のがん2%(増殖し転移する)と偽物のがん2%(増殖するが転移しない),がんもどき96%(がんもどきは増殖も転移もしない)に分けられる.

[2]「本物のがん」は発見可能になる時点で既に転移しているが,「がんもどき」は放置しても転移しない.

[3]それ故「本物のがん」であっても「がんもどき」であっても手術は無意味であり,極力手術は受けず免疫療法のみで対処する.

[4]手術や早期発見を目的とした検診は無意味である.

というような内容です.

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S:最近,友人の奥様が乳癌検診でがんもどき(?)を発見されました.病理医間でもがんかがんもどきかでなかなか意見が一致しなかったようなのですが,広範囲に病変が拡がっていることから,乳房全摘することになりました.もし放置して転移したら取り返しの付かないことになるからです.その場合,誰が責任をとってくれるのでしょう?

S:乳癌の場合,病理診断自体が難しい症例は多くあります.とくに最近の乳癌は小さいうちに発見されるので,年々診断は難しくなってきています.また,地方のがんセンターにいて思うことですが,臓器によっては手術のしすぎという一面は確かにあります.経過観察(watchful waiting)を含め,他の治療法を選ぶべきと思われる症例でも手術となる.しかし,免疫療法では完治しないというのも同様に確かです.

S:無論,例外はあります.私の父はC型肝炎→肝硬変→肝癌→肺転移という典型的な経過をたどり,がんセンターでは治療困難として見放されましたが,その後,藁にもすがる思いで中国の秘薬を服薬したところ,肺転移巣消失→肝臓消失→肝炎治癒に至り,肺転移が発見されてから15年以上ピンピンしています.

S:結局,現在の医療は診断から治療に至るまで不完全なのであって,そのため「がんもどき理論」が生まれるのです.わたしの家内もその熱烈信奉者です.その真贋はともかくとして,医療は善意のうえに成り立っていること,決して悪意で診断から手術まで行われているのはないという点は是非誤解なさらないようお願いいたします.

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