■書ききれなかった数の話(その10)

【1】ハッセの局所・大域原理

 整数係数の多項式f(x1,x2,・・・,xn)≡0  (mod p^k)がすべての素数pとすべてのkに対して解をもち,かつ,f=0が実数解をもつとき(局所解をもつとき),f=0は整数解あるいは有理数解をもつか?(大域解をもつか?)

 ハッセの局所・大域原理とはすべての局所解の存在が大域解の存在を与えることをいう.

[1]ハッセの局所・大域原理は2次形式に対して成り立つ(ハッセ・ミンコフスキーの定理)

 しかし,すべての多項式の集合に対して成り立つわけではない.

[2]1942年,ライヘルトは3元4次形式

  x^4−17y^4−2z^4=0

はすべての局所解をもつが大域解をもたないことを証明した.

[3]セルマーは3元3次形式

  3x^3+4y^3+5z^3=0

など,このような例を多数与えた.

  x^4−17−2y^2=0

 ハッセの局所・大域原理の適用範囲は未解決問題として残されたままである.

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【2】2次形式

[1]フェルマー・オイラーの定理(2平方和定理)

 m=4k+3の形をした数は2つの平方数の和になりません.mの素因数分解におけるp=4k+3の形のすべての素因数の指数が偶数であるときに限り,2つの平方数の和の形に表すことができるのです.すなわち,

「x^2+y^2=nと表されるための必要十分条件は,p=3 (mod 4)なるnの素因数pが偶数ベキであることである.」

[2]3平方和の定理

  「正整数nが3つの平方数の和として表せる←→4^m(8k+7)の形をした数ではない.」

 n≠4^m(8k+7)はnが高々3個の平方数で表されるための必要十分条件です.ガウスの定理ともルジャンドルの定理とも呼ばれますが,ルジャンドルは2次形式ax^2+by^2+cz^2の研究を通して,より一般的な3元2次形式論としてこの結果を得ています.

[3]バシェ・ラグランジュの定理

 「すべての正の整数は高々4個の整数の平方和で表される」というのが,「バシェ・ラグランジュの定理」です.驚くべきことに,任意の自然数がたった4つの平方数の和の形に表せるのです.このことを,シンボリックに書くと

  n=□+□+□+□

となります.□は平方数の意味です.

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【3】3元2次形式(ルジャンドルの定理)

 a,b,cは非零の有理整数で,平方因子をもたず,どの2つも互いに素で,すべてが同符号でないとき,

  ax^2+by^2+cz^2=0

であることが,−bc,−ca,−abがそれぞれa,b,cを法とする平方剰余であることと同値である.

 ルジャンドルの定理は3変数の一般的なハッセ・ミンコフスキーの定理と同値である.

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【4】シュバレーの定理

 定数項が0の整数係数の多項式f(x1,x2,・・・,xn)≡0  (mod p)はすべての素数pに対して自明でない解をもつ.

[例]4元2次形式

  x^2+y^2+z^2+w^2=0  (modp)

はすべての素数に対して自明でない解をもつ.これはラグランジュの定理の中心をなす事実である.

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