今回のコラムでは,外接球を有する中心対称な多面体を転がしたとき(rolling)に各面のでる確率を求めてみます.
転がり運動中は辺で接地していて,辺を中心として回転していると考えられます.多面体が辺で立っていてその真上に重心がある状態を想定してみてください.そのとき,重心の高い面と低い面とがあるならば,重心が低くなる面に落ち着く確率が高くなるでしょう.
したがって,多面体の重心・辺の中心間距離,重心・面の中心間距離の差が,目のでる確率を規定することがわかります.ただし,ここでは辺の中心とそれを挟む両面の中心,多面体の重心が辺と直交する同一平面上にある場合のみを考えています.
また,特定の辺を中心として回転する確率は辺の長さに比例して増加しますから,これらの条件を考慮に入れて,任意の切頂立方体をrollingした場合に各面のでる確率を切頂の深さdの関数として表すことにします.
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【1】切頂立方体(0≦d≦1の場合)
重心から八角形面までの距離:H8=1
重心から正三角形面までの距離:H3=√3(1−d/3)
は簡単に求められます.
また,八角形面と正三角形面とに挟まれた辺の中心と重心との距離H83および長さL83はそれぞれ
H83={2(1−d/2)^2+1}^(1/2)
L83=√2d
八角形面と八角形面とに挟まれた辺の中心と重心との距離H88および長さL88は,
H88=√2
L88=2(1−d)
したがって,正三角形面のでる確率P3は
L83(H83−H3)
八角形面のでる確率P8は
L83(H83−H8)+2L88(H88−H8)
に比例することになります.
P3+P8=1
ですから,
P3=L83(H83−H3)/{L83(H83−H3)+L83(H83−H8)+2L88(H88−H8)}
と求められます.
狭義の切頂立方体(d=2−√2)は準正多面体ですから,L83=L88です.
P3=(H83−H3)/{(H83−H3)+(H83−H8)+2(H88−H8)}
を計算してみると
八角形面:三角形面=0.983874:0.0161255
となります.
また,立方八面体(d=1)ではL88=0ですから,
P3=(H83−H3)/{(H83−H3)+(H83−H8)}
四角形面:三角形面=0.762392:0.237608
と計算されます.
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【2】切頂立方体(1≦d≦2の場合)
r=2−d
とおくと
重心から正方形面までの距離:H4=1
重心から六角形面までの距離:H6=√3(r+1)/3
となります.朝鮮サイコロ(d=3−√3)は内接球をもつ切頂立方体で,各面の中心と重心との距離が等しくなります(H4=H6).
また,正方形面と正六角面とに挟まれた辺の中心と重心との距離H46および長さL46はそれぞれ
H46={2(r/2)^2+1}^(1/2)
L46=√2r
六角形面と六角形面とに挟まれた辺の中心と重心との距離H66および長さL66は,
H66=√2(r+1)/2
L66=√2(1−r)
正方形面のでる確率P4は
L46(H46−H4)
六角形面のでる確率P6は
L46(H46−H6)+2L66(H66−H6)
に比例することになります.
P4+P6=1
より,
P4=L46(H46−H4)/{L46(H46−H4)+L46(H46−H6)+2L66(H66−H6)}
実際に計算してみると,切頂八面体(d=3/2)では
四角形面:六角形面=0.0941103:0.90589
朝鮮サイコロ(d=3−√3=1.26795)では
四角形面:六角形面=0.302534:0.697466
となります.
切頂立方体(1≦d≦2)をrollしたときの各面のでる確率が等しくなるためには四角形面:六角形面=3:4ですが,このとき切頂の深さdは数値計算によって,d=1.179となります.また,四角形面と六角形面のでる確率が等しくなる(四角形面:六角形面=1:1)ためには,d=1.136と計算されます.
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【3】準正多面体[3,4,4,4]の場合
d=2(√2−1)とおくと
重心から正三角形までの距離:H3=√3(d+1)/3
重心から六角形面までの距離:H4=1
また,正三角形面と正方形とに挟まれた辺の中心と重心との距離H34および長さL34はそれぞれ
H34={2(d/4+1/2)^2+(d/2)^2}^(1/2)
L34=d
正方形面と正方形面とに挟まれた辺の中心と重心との距離H44および長さL44は,
H44={(d/2)^2+1}^(1/2)
L44=d
P4+P6=1
さらに,準正多面体ですからすべての辺の長さは等しく(L34=L44)
P4=(H34−H3)/{(H34−H3)+(H34−H4)+2(H44−H4)}
と求められます.d=2(√2−1)を代入して,実際に計算すると
三角形面:四角形面=0.0976515:0.902348
となります.
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【4】まとめ(tossingとrollongの確率比較)
切頂立方体(tossing) 八角形面:三角形面=0.906684:0.0933161
切頂立方体(rolling) 八角形面:三角形面=0.983874:0.0161255
立方八面体(tossing) 四角形面:三角形面=0.649038:0.350962
立方八面体(rolling) 四角形面:三角形面=0.762392:0.237608
切頂八面体(tossing) 四角形面:六角形面=0.212643:0.787357
切頂八面体(rolling) 四角形面:六角形面=0.0941103:0.90589
朝鮮サイコロ(tossing) 四角形面:六角形面=0.406665:0.593335
朝鮮サイコロ(rolling) 四角形面:六角形面=0.302534:0.697466
斜立方八面体(tossing) 三角形面:四角形面=0.157896:0.842104
斜立方八面体(rolling) 三角形面:四角形面=0.0976515:0.902348
サイコロを転がすと勢いがつくので小さな面がでる確率は低くなります.たとえば,朝鮮サイコロではtossingでは約4:6,rollingでは約3:7となるのですが,2種類の面をもつこれらの多面体では,小さい面がでる確率は10%程度低くなることがわかります.
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