■ワイソフ計量空間(その3)

 (その2)には間違いというほどではないが,脚注をつけて補足しないと誤解を生む箇所が多々ある.

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[1]まず,ワイソフ計量空間というのは小生の造語で,勝手につけた名前であるが,要は正多胞体・準正多胞体の頂点と辺からなる格子状図形である.

 この図形は外接球・中接球をもち,重心が中心に一致するから,単位球に内接するとき,

[定理]ひとつの頂点からでるすべての辺と対角線の長さの2乗和は頂点数の2倍に等しい.

あるいは

[定理]すべての辺と対角線の長さの2乗和は頂点数の2乗に等しい.

という性質をもつ.この性質を用いて正五角形の作図可能性の証明を与えることができる.

 しかし,ここでは対角線の長さは扱わず,専ら2頂点間の経路長や経路数を扱うことにする(多面体的組み合わせ論).

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[2]一般にn次元多胞体はファセットを定める不等式a・x≦bの積集合として記述される.多胞体のすべての頂点の座標を求めるには,たとえば,

  [参]フバータル「線形計画法」

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[3]シュレーフリ記号

 3次元正多胞体はシュレーフリ記号{p,q}・・・各頂点にp角形がq面集まる多面体,4次元正多胞体はシュレーフリ記号{p,q,r}・・・各頂点にp角形がq面集まる多面体が各辺にr個集まる・・・で表記される.

 シュレーフリは(n−1)次元の正多面体が(n−2)個の整数列

  (p1,p2,・・・,pn-2)

で表されるとき,それを超平面要素にもち,3次元低い各構成要素上にpn-1個ずつ超平面が会するようなn次元正多面体を

  (p1,p2,・・・,pn-2,pn-1)

で表した.

 すなわち,シュレーフリ記号

  (p1,p2,・・・,pn-1)

はpn-3のまわりにn−1次元胞体(p1,p2,・・・,pn-2)がpn-1個すつ会するという意味である.

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[4]シュレーフリ記号+ワイソフ記号

 正単体のシュレーフリ記号は{3,3,・・・,3,3}

 正軸体のシュレーフリ記号は{3,3,・・・,3,4}

 立方体のシュレーフリ記号は{4,3,・・・,3,3}

で表され,その後にワイソフ記号が添加される.

  {3,3,・・・,3,3}(m0,m1,・・・,mn-1)

 正単体は{3,3,・・・,3,3}(1,0,・・・,0)

     {3,3,・・・,3,3}(0,0,・・・,1)

 正軸体・立方体は

     {3,3,・・・,3,4}(1,0,・・・,0)(正軸体)

     {3,3,・・・,3,4}(0,0,・・・,1)(立方体)

となる.

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[5]ワイソフ構成はn次元ベクトル

  m=(m0,m1,・・・,mn-1)

  miは0または1で,同時に0であってはならない

として表記することができるから,2^n−1種類ある.

 ワイソフ構成を決めると,n次元準正多胞体がひとつ定まるから,非自己双対の場合,切頂型・切頂切稜型準正多胞体は

  2^n−1

種類あるが,自己双対の場合は

  2^(n-1)+2^[(n-1)/2]−1

種類ある.

 しかし,3次元と4次元では重複する場合がある.

  {3,3}(0,1,0)≡{3,4}(1,0,0)

  {3,3}(1,0,1)≡{3,4}(0,1,0)

  {3,3}(1,1,1)≡{3,4}(1,1,0)

  {3,3,4}(0,1,0,0)≡{3,4,3}(1,0,0,0)

  {3,3,4}(1,0,1,0)≡{3,4,3}(0,1,0,0)

  {3,3,4}(1,1,1,0)≡{3,4,3}(1,1,0,0)

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[6]正単体系切頂型は2(n+1)胞体,正軸体系切頂型は2^n+2n胞体,切頂切稜型はこれ以外であるが,切頂型にアルキメデス角柱を添加して得られる図形である.

次元  正単体切頂型   正単体切頂切稜型

3      2        2

4      3        5

5      4       14

6      5       29

n    n−1   2^(n-1)+2^[(n-1)/2]−n−1

次元  正軸体切頂型   正軸体切頂切稜型

3      3        2

4      5        8

5      7       22

6      9       52

n   2n−3    2^n−2n

では重複するもの,正多胞体になるものを除いていないので注意.

 3次元正単体切頂型は正八面体,4次元正軸体切頂型は正24胞体を含んでいる.

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