■統計力学序説(その3)

 いまだ頭の中に残っている高校化学の問題を掲げておきたい.アボガドロ数6×10^23に関する良問である.

[Q]牛乳瓶に入った水を海に投げ入れる.海洋全体に一様に拡散したのち,牛乳瓶1本分の水を回収すると,最初に投入した水の分子のうち,どれくらいが回収されるか?

 小生は限りなく0に近いと予想したのだが,牛乳瓶1本の水は10モル=6×10^24個の水分子を含んでいて,海洋全体の水量をもとに計算すると770個も回収されるというのが正解である.アボガドロ数6×10^23がいかに大きいものかが実感される.

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 アボガドロ数は物質1モルが含む分子の個数=6.023×10^23,ロシュミット数は0℃,1気圧の気体,1ml中の分子の個数=2.687×10^19.その巨大さについて,ジーンズは面白い話を書いている.

[Q]シーザーの死後,その肺の中にあった空気が大気中に一様に拡散したとする.今日私たちの肺中にこの分子は何個はいっているだろうか?

[A]10個程度

[Q]コップ1杯の水を海中に流し,これが海洋中に一様に拡散したとする.海水中からふたたびコップ1杯の水を汲みあげるとき,コップ中にこの分子は何個存在するだろうか?

[A]1000個程度

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