■デューラーの八面体の製作(その14)

[Q1]同一の円に内接・外接する2つの正六角形を考える.小さい正六角形の面積が3のとき,大きい正六角形の面積は?

[A1]小さい正六角形の頂点と大きい正六角形の辺の中点が一致するように,外側の正六角形を回転させる.次に円の中心と内側の正六角形の頂点を結び,内側の正六角形を正三角形で6等分する.さらに正三角形の重心と頂点を結び,内角30°,30°,120°の二等辺三角形で内側の正六角形を18等分する.

 このように線でわけると「麻の葉文様」の24個の合同な三角形ができる.そのうち18個が小さな正六角形を形作る.面積比は18:24=3:4であるから,大きい正六角形の面積は4となる.この問題に三角関数は不要であって,計算してはならない問題なのである.

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【1】無限同心円列

 デューラーの八面体の2次元対応物は正六角形となるが,この問題より,内接円と外接円の半径の比は√3:2になる.また,このことから縮小率√3/2=0.866025の無限同心円列の入れ子ができることがわかるだろう.

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【2】無限同心球列

 外接球の半径は

  r^2=(x^2+z^2)/4+1=(d^2+5)/4

  t=2(d^2−1)/(d^2+1)

 内接球の半径は,

  z^2=d^2+1−x^2=3−1/d^2

  |(3/2−t)d|z/√3=(7−d^2)/2(d^2+1)・d・z/√3=(7−d^2)/2(d^2+1)・√(d^2−1/3)

で与えられる.

 その半径比は

  (7−d^2)/(d^2+1)・√{(d^2−1/3)/(d^2+5)}

d=1.43929を代入すると0.795512

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 ついでに,内接球と正三角形面の接点が正三角形面の重心になるかどうかも調べておきたい.正三角形の重心を通る球の半径は

  r2^2={(d+x/2)^2+(z/2)^2}(1−2t/3)^2

    =R^2(1−2t/3)^2=(9d^2−3)/4・(1−2t/3)^2

 t=2(d^2−1)/(d^2+1)より,

  r2=(7−d^2)/2(d^2+1)・√(d^2−1/3)

となって,正三角形の重心を通ることが確かめられる.

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【3】無限菱面体列

 菱形の鋭角が3つ集まって構成される2つの頂点

   (0,0,0),(2d+x,0,z)

までの距離は等しく

  R^2=(d+x/2)^2+(z/2)^2=(9d^2−3)/4

 外接球の半径は

  r^2=(x^2+z^2)/4+1=(d^2+5)/4

で与えられる.

 その半径比は

  √{(d^2+5)/(9d^2−3}}

d=√(13/7)を代入すると

  √{(d^2+5)/(9d^2−3}}=1/√2=0.707107

と非常に簡単な形の無限入れ子になる.

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【4】おまけ

[Q2]1辺の長さが2の正方形に内接する正十二角形の面積は?

[A2]2×2正方形は16個の合同な正三角形と32個の合同な二等辺三角形(内角15°,15°,150°)に分割される.正十二角形は12個の正三角形と24個の二等辺三角形により形作られる.したがって,この正十二角形の面積は3である.すなわち,半径1の円に内接する正十二角形の面積は3であるという円周率πの近似を与えていることになる.

 この問題は1898年にハンガリーの数学者キルシェクにより十二角形の面積が決定されたもので「キルシェクのタイル」と呼ばれる.正方形の中に各辺を1辺とする正三角形を4個作る.次に正三角形の頂点で正方形の中にあるもの同士を結んで正方形を作る.すると,正方形の各辺の中点4個と4つの正三角形の交点8個で正十二角形ができる.このように,正三角形の頂点を結んで作られた正方形と正十二角形がキルシェクのタイルの基本形となる.

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[Q3]正六角形を8個の合同な正三角形に分割せよ.

[A3]同一の円に内接・外接する2つの正六角形を考える.小さい正六角形の面積が3のとき,大きい正六角形の面積は4となる.この問題を解くのに三角関数は不要である.計算する代わりに,以下のような平面分割をしてみよう.

 小さい正六角形の頂点と大きい正六角形の辺の中点が一致するように外側の正六角形を回転させる.次に円の中心と内側の正六角形の頂点を結び,内側の正六角形を正三角形で6等分する.さらに正三角形の重心と頂点を結び,内角30°,30°,120°の二等辺三角形で内側の正六角形を18等分する.このように線でわけると「麻の葉文様」の24個の合同な三角形ができる.そのうち18個が小さな正六角形を形作る.面積比は18:24=3:4であるから,大きい正六角形の面積は4となる.

 次に,大きな正六角形を8個の正三角形に分割することを考える.麻の葉3枚で正三角形ができるから,24ピースを8個の正三角形に分割することができる.ここでは合同な24ピースに切ったが,切り方を工夫してピースの個数を減らすこともできるだろう.たとえば,大きな正六角形を12ピース(小さな正六角形を正三角形に6等分+麻の葉6枚)に切って,残りの麻の葉6枚を正三角形を2個に並び替えると8個の正三角形に作り替えることができる.しかし,これでピース数が最小になっているかどうかはわからない.もっとエレガントな切断方法があるかもしれないのである.

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[Q4]正12角形を3個の合同な正方形に分割せよ

[A4]1辺の長さが2の正方形に内接する正十二角形の面積は3となる.個の問題も計算する代わりに分割してみると,2×2正方形は16個の合同な正三角形と32個の合同な二等辺三角形(内角15°,15°,150°)に分割される.正十二角形は12個の正三角形と24個の二等辺三角形により形作られる.したがって,この正十二角形の面積は3である.すなわち,半径1の円に内接する正十二角形の面積は3であるという円周率πの近似を与えていることになる.

 この問題は1898年にハンガリーの数学者キルシェクにより十二角形の面積が決定されたもので「キルシェクのタイル」と呼ばれる.正方形の中に各辺を1辺とする正三角形を4個作る.次に正三角形の頂点で正方形の中にあるもの同士を結んで正方形を作る.すると,正方形の各辺の中点4個と4つの正三角形の交点8個で正十二角形ができる.このように,正三角形の頂点を結んで作られた正方形と正十二角形がキルシェクのタイルの基本形となる.

 ここでは36ピースに切断しているが,切り方を工夫してピースの個数を12個に減らすことができる.

  [参]Frederickson GN: Dissections: Plane and Fancy, Cambridge University Press, 1997(p3)

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