■菱形タイルによる非周期的平面充填(その2)

【1】ハーボースのタイル貼り

 ハーボースは与えられたnに対して,平面をn通りに埋め尽くすようなタイル集合を作ることができるかという問題に取り組んだ.

 n=4の場合の解は正17角形と関係する(2π/17−15π/17)の菱形とそれを6つ結合させた紅葉型・王冠型タイルで,平面を4通りに埋め尽くすことができる.

 一般には,

[1](2π/(6n−7),(1−2/(6n−7))π)の菱形

[2]それを(2n−2)個結合させた紅葉型・王冠型タイル

で,平面を4通りに埋め尽くすことができる.

===================================

【2】フォーデルベルクのタイル貼り

 フォーデルベルクの9角形タイルは周期的にも非周期的にも平面を充填できる.これを積み重ねることで周期的にタイル貼りできる8角形ができる.またらせん状に配置することで非非周期的に平面を充填する.

 同様な性質をもタイルとしては,正22角形と関係する(π/11−10π/11)の菱形を2分割した二等辺三角形などが発見されている.

===================================

【3】六角形1種類による非周期的平面充填

 実は,最近まで非周期的に平面をタイル貼りできる図形は,すべて周期的にも平面を充填できると考えられていた.

 1964年,非周期的にタイル貼りできるが周期的にはタイル貼りできないタイルの組み(集合)が存在するというバーガーの発見には大きな注目が集まったが,このタイル貼りを実現するのには20000種以上のタイルを必要とした.

 その後,ロビンソンはタイルの種類を6つまで減らしたが,1974年にイギリスの数理物理学者ペンローズの発見した,凧と矢(あるいは2種類の菱形)を組み合わせて平面を非周期的に敷きつめるものが最も構成要素の少ないものと考えられていた.ところが,・・・

[Q]1個の要素からなる非周期的集合(付き合わせ条件があっても,なくてもよい)があるか?

[A]実は1種類の場合が見つかっています.Joshua E. S. SocolarとJoan M. Taylorが示した非周期六角形タイルは,この問題(Einstein problem)の肯定的な解決になっています.つまり「2個の要素からなる非周期的集合」がペンローズ・タイルであり,「1個の要素からなる非周期的集合」がこの問題の解というわけです.

[参]J. E. S. Socolar and J. M. Taylor, An aperiodic hexagonal tile, Journal of Combinatorial Theory

18 (2011), 2207-2231.

[参]J. E. S. Socolar and J. M. Taylor, Forcing nonperiodicity with a single tile, to appear in Mathematical Intelligencer 33 (2011).

 なお,この非周期的タイリングは付き合わせ条件が必要な場合であって,付き合わせ条件がない凸多角形の問題ではありません.

===================================