■エンドレス・キューブと平行多面体(その2)

 デュドニー分割では,正三角形の周は正方形の内部に移り,正方形の周は正三角形の内部の点だけから構成されている.この立体版の分割も考えることができる.すなわち,立体Aの表面が立体Bの内部に移り,立体Bの表面が立体Aの内部の点だけから構成されているというものである.これはデュドニー分割よりも難しい問題であるが,このような例として秋山仁先生の「キツネヘビ」があげられる.

 秋山先生は菱形十二面体と直方体の間の立体ハトメ返し,切頂八面体と直方体の間の立体ハトメ返しなど空間充填形同士のハトメ返しが作られ,講演ではそのような小道具を使って菱形十二面体,切頂八面体の体積を求めておられる.また,このとき多面体の形が変形するばかりでなく,菱形十二面体,切頂八面体の表面が直方体の内部に隠れることを利用して,黄色(キタキツネ)を緑(ヘビ)に変色させ,キタキツネが一瞬にしてヘビに飲み込まれる様子を表現している.

 適当な稜が蝶番でつながれた8つの立方体の輪も立方体(2×2×2)に折りたたむことができる.表の24面を裏返すと裏の24面が現れてくることを利用して観光地の写真を貼り付けてあるおみやげグッズもある.

 これはエンドレスキューブと呼ばれているが,秋山先生はこのようなリバーシブルな等積変形多面体をすべて決定する試みをされている.先日,パリ大学で行われた秋山先生の変身多面体の講義は,多くの研究者の関心を集めたようで,中にはアルゴリズムの研究から多面体の研究に鞍替えしたいという若い研究者も現れたぐらいだったそうである.

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