■リッチ流と幾何化予想(その3)

  [参]小林亮一「リッチフローと幾何化予想」培風館

には,1970年代サーストンによって予想された3次元閉多様体の幾何化が,ハミルトンとペレルマンによってどのように解決されたかの詳細が解説されている.

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 1982年,ハミルトンはリッチフロー方程式を導入し,リッチフローの曲率テンソルが満たす発展方程式とそれに有効に働く最大値原理というリッチフロー研究の基盤を確立した.

 しかし,任意の3次元閉多様体上の任意のリーマン計量をリッチフローで整形することによって幾何化予想を解決しようとするハミルトンプログラム(1999年)には大きな困難が残った.それはリッチフロー解に特異点が生ずるときの単射半径の下からの評価である.

 この困難を解決し,ハミルトンプログラムを完成させて幾何化予想を解決したのがペレルマンである.ペレルマンが打ち出した「次局所崩壊定理」は単射半径の評価という困難を解決したが,幾何化予想の解決にはそれで終わりではなく,さらに横たわる困難を解決しなければならなかった.それを解決したのがペレルマンの「標準近傍定理」である.

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