■リッチ流と幾何化予想(その1)

 ポアンカレ予想は「任意の3次元閉多様体M^3は3次元球面S^3に同相か?」というトポロジーに関する問いかけである.トポロジーは曲げたり伸ばしたりの連続変形を施しても変わらないようなものを研究する分野であるが,3次元空間に浮かんだタマゴのような2次元曲面(2次元多様体)は2次元球面S^2と同相である.コーヒカップのように取っ手をもつ立体は球と同相ではない.

 1961年,ゼーマンは5次元立体に対するポアンカレ予想を肯定的に証明した.同年スメールは7次元以上のすべての立体に対して,翌年ストーリングスは6次元立体に対して,1982年,フリードマンが4次元立体に対する証明を与えた.これで残るはただひとつ,4次元空間に浮かんだ3次元立体だけとなった.4次元空間における3次元曲面(3次元多様体)が3次元球面S^3と同相であるかどうかだけがとり残されたことになる.

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 2003年春にロシアの数学者ペレルマンがポアンカレ予想を解決したというニュースが伝えられました.当時,ポアンカレ予想はサーストンの幾何化予想の系として解決されたとアナウンスされ,その後,専門家の間で彼のプレプリントが検討され,証明をチェックする作業に遅れがでているものの全体としては解決の方向に向かっていることが確認されているとのことでした.

 サーストンの幾何化予想とは,3次元多様体は8つの異なる基本的要素に分解できるというもので,サーストンはいくつかの仮定の上でこの予想を証明しました.この業績のためにサーストンは1983年にフィールズ賞を受けています.また,ハミルトンはリッチ流を利用して,いくつかの制約条件のもとで,3次元多様体の基本的要素は8つの形しか取りえないことを証明しました.しかし,仮定なしの一般的バージョンに関する限り,依然として未証明だったのです.

 ペレルマンは,リッチ流の理論をサーストンの幾何化予想の一般的バージョンに拡張させることに成功したのです.ペルレマンの証明に対しては詳細な検証が必要ですが,証明の欠陥はみつからず,主張に誤りがないことが確認されたいうわけです.

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