■リーマン予想が解かれた!(かも・第3報)

 

 リーマン予想が解かれた!(かも)の第3報である.最近,杉岡幹生氏から頂戴した情報と以前に畏友・阪本ひろむ氏からもらったジョン・ナッシュに関する情報を抱き合わせて紹介することにしたい.

 

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(1)杉岡→佐藤

 

 また,リーマン予想の続報をインターネットのCNet Newsで見つけましたので,お知らせします.この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです.

 

150年来の謎を解明か--米大学教授,数学の「リーマン予想」を証明と発表』

  Michael Kanellos (CNET News.com)

  2004/06/11 09:42   Trackback (2)

 

 パデュー大学のある数学者が,いまだに解決されていない最大の数学の謎とされているリーマン予想を,ついに証明したと主張している.ただしこの証明は,これから他の数学者らにの手で審査されるところだ.

 

 パデュー大学理学部の数学教授,Louis de Branges de Bourciaは今週,証明の試みの詳細を記した23ページの論文をウェブページに掲載した.ふつう数学者はこうした研究成果を学会や科学ジャーナルで発表する.しかし,リーマン予想の解の発見者には100万ドルの賞金が与えられることになっているため,同氏は学会やジャーナルでの発表より前に公表することにした.

 

 de Brangesはあらかじめ準備した声明のなかで,「他の数学者たちに,私の研究成果を審査していただきたい.この証明はいづれ,正式な学会誌等に投稿するつもりだが,状況を考えると,この証明をすぐにインターネットに掲載しなければならないと思った」と述べている.

 

 リーマン予想は素数の分布に関するものだ.素数はそれ自体と1以外では割り切れない数のことで,暗号化技術などのタスクで必要とされている.

 

 先月にはあるグループがこれまでで最も大きな素数を発見し,今月に入ってそれが正しい結果であることが確認された.この新素数は2の24036583乗マイナス1で,10進法で表記すると7235733ケタになる.

 

 他の数学の問題の多くと同様,リーマン予想の証明がすぐに商用目的に役立つとは考えにくいが,今から数十年の内には応用される可能性が間違いなくある.

 

 リーマン予想の歴史は,数学者のBernhard Riemannが1859年に素数の分布方法についての理論を思いついたことに遡る.しかしRiemannは証明を完結する前に,1866年に亡くなった.

 

 それ以来,この問題はカルト的な人気を集めてきた.映画「ビューティフルマインド」のモデルとなったノーベル賞受賞数学者のJohn Nashも,この問題の解明を試みていた.2001年にはClay Mathematics Institute(マサチューセッツ州ケンブリッジ)が,この問題を証明した者に100万ドルの賞金を出すと発表した.

 

 de Brangesは約20年前,これとは別の有名な数学問題,ビーベルバッハ予測を証明した人物として非常に有名だ.同氏はそれ以来,研究のほとんどをリーマン予想の証明に費やしてきていた.

 

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(2)阪本→佐藤

 

 わたしとNashとの関わりは以下の通りです.多少記憶違いがあるかもしれないが・・・.

 

 J.Nashは,映画「ビューティフル・マインド」で一般に知られる様になった数学者であるが,任意のリーマン多様体のユークリッド空間への埋め込みが可能であるという定理を証明した.

  The Imbedding Problem for Riemannian Manifold

  Annals of Mathematics 56(1956) 20-63

(雑誌に掲載されたのは,奇しくも私の生まれた年である.)

 

 分野からいうと,これは多様体論に属する論文であるが,後年,この論文の手法は非線形問題(とくに非線形偏微分方程式)の根の存在を証明する手法として有効であることが分かった.

 

 J.Nashの手法は,(この手法の改良者の名前をあわせて)Nash-Moserの定理と呼ばれるようになった.私が大学院時代に取り組んだ非線形波動方程式の問題も,Nash-Moserの定理が用いられている.

 

 映画「ビューティフル・マインド」により,Nashが存命であり,ノーベル経済学賞を獲得したことを知った.

 

 さて,リーマン多様体のユークリッド空間への埋め込み定理には後日談がある.Nashの証明は,コンパクトな多様体の場合,間違いはない.しかし,コンパクトでない多様体の証明には見落としがあることが発見された.発見者は,ちょっと証明方法をちょっと変えるだけで,コンパクトでない多様体の場合もNashの命題は成立することを示している.

 

 この証明の間違いは近年に発見された(1998年 R.M.Solvey).これはNash宛のE-mailで明らかにされ,Nashのホームページ

  http://www.math.princeton.edu/jfnj/

からダウンロードできる.

 

 私も証明の誤りを見つけられなかった数学者の一人であるが,50年!も多数の数学者が誤りを発見できなかった訳である.なお,Beautiful Mindの著者たち(H.W.Kuhn, S.Nasar)によるJ.Nashの論文集"The Essential John Nash"(2002 Prinston Univ. Press)があり,容易に入手できる.

 

 彼の論文は難解であるが,我と思わん人は挑戦してはいかが.

 

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