■ダイヤモンド結晶とK4結晶(その13)
珪化ストロンチウム(SrSi)はSiのカゴ状構造中のなかにSrが取り込まれた形をしていて,珪素原子の配列はK4結晶構造をとる.すなわち,珪素原子間の結合で一番近いのを繋ぐと全部3本になるが,この構造を炭素でつくれないだろうかというのは自然な発想であろう.ダイヤモンド結晶が存在するのだから,K4結晶が現実の存在しても不思議ではない.
砂田先生は材料科学の研究者とK4結晶を実際に作るプロジェクトを開始している.炭素原子でK4結晶が合成できたとしたら,その物理的性質はどのようなものになるだろうか?
炭素元素の原子価は4であることからすべてが炭素原子のみから構成されるためには二重結合が必要になる(sp2混成).sp2で繋がった3次元の炭素K4結晶のシミュレーションの結果,電気を通す金属としての性質があることがわかったそうである.構造が安定であることから機械構造物の骨組みとして使えば金属材料を使うより軽くできることも計算でわかっている.
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【1】K4結晶構造模型とカーボンナノケージ
K4結晶では,格子のすべての頂点の次数は3である.ダイヤモンド結晶が6角形の連なりからできているのに対し,K4結晶では10員環からなる網の目がみられる.
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名古屋大学が合成した炭素のかご(カーボンナノケージ)は,炭素の個数こそ違えども,形としてはK4結晶と同じ3面体である.
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このつなぎ方はは中川宏さんがすでに見つけている切稜立方体(=切頂菱形12面体)の積み木模型とそっくり同じものである.したがって,K4結晶=空間充填18面体=4軸構造という図式が成り立つ.
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にもかかわらず,この木工模型を眼にした誰もがK4結晶と同じだということに気がつかなかった.中川さんの作品を見逃していたのはまさに灯台下暗しであるが,立体感のない図を見ただけで同じ立体だと気づくのがいかに難しいかという教訓であろう.
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