■研究の原点回帰(その2)

 数学の論文では,中心的な結果を定理(theoren),定理に至る途中の補助的な結果を補題(lemma),定理から即座に得られる結果を系(collorary),ほぼ自明な結果を命題(proposition)と呼ぶことになっている.

 すなわち,定理とはきわめて重要な価値のある結果であり,補題や系,命題は定理から直ちに導かれる,定理ほど価値のない結果のことである.であるから,同じ数学的結果でも個人的な趣味によっては,定理にも命題にも補題にも系にもなり得る.

 例をあげると,コラム「スターリングの公式の幾何学的証明?」シリーズは解析と幾何の一見無関係な分野間の橋渡しであって,私にとってはすこぶる面白いアプローチであるが,秋山仁先生にとっては厳密さを欠いた削除すべき対象なのである.

 ともあれ,数学好きが亢じて臆面もなく数学の効用を伝えることを企てたえせ数学者は,数学のもつ厳密さとは正対することのないまったくの無頼派として,今後も数学の世界にどっぷりとはまるしかないのである.

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