■代数的方法と数値的方法

 √2とは何か.たとえ,小数点以下100桁まで数値計算したとしても

  √2=1.14142・・・

  √2=1.141421356・・・

  √2=1.141421356237・・・

と続く無理数だというのでは説明になっていない.

 2の平方根は代数方程式x^2=2を満たす正の数であって,正多面体の頂点の間を関係を証明するには,代数的方法によらなければならない.ジョンソン・ザルガラー多面体の座標を近似計算する数値的方法では本当に存在することを証明することにはならない.近似解ではなく,代数方程式自身が存在することを示すのである.

 それに対して,コンピュータの画像処理をするには1.4142など近似値を使ってもよいわけで,解像度以上のデータを使っても意味がない.然るべき場合には代数的方法によらなければならず,そういう使い方をしていることと,初めから近似計算で結果をだそうとすることとは違うのである.

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【補】関口次郎先生による補足

 まずジョンソン立体のような図形があったとする。それを座標空間にあるとして、その図形の頂点に名前をつける。平行移動、回転などで図形はかわらないから、一部の頂点は都合のよいところに持ってきておく。陵の長さもはじめから都合のよいものにしておく。たとえば1、2など。そして一つの面の隣り合う2頂点に対して、長さをすでにきめておいた値である、という条件から方程式を求める。このような2頂点すべてに対して方程式が求まります。

 3角形は頂点がきまればそれで固定されます。ところが正方形の場合には隣接する2頂点の長さだけをきめても固定できません。4頂点が同一平面上にあること、また対角線の長さについても方程式がでてきます。これらから座標の成分のあいだのたくさんの方程式がもとまります。この多くの変数の連立代数方程式の実数である解の組があればそれから頂点が定まり、それで立体図形を構成できます。

 いまの場合には実数解の組がいくつかあり、したがって、立体図形がいくつか構成できます。ここまでの議論で忘れていることは凸立体である、という条件です。この条件は方程式にはなじまないものです。不等式で表示できる条件ですから、避けていました。しかし、このようにして求められた立体の画像をみれば、だいたい凸であるかそうでないかの判定は容易にわかります。

 また、留意しなかればならないことは、隣接する2つの面が同一平面上にあるかどうかの判定しなければなりません。この例の場合には隣接する2つの正3角形の組で微妙なものがありますが、座標成分の近似値をみればそうでないことは容易に判定できます。(多くの変数の連立代数方程式に実数の解の組がなければ、もとのジョンソン立体らしきものは偽物であることが判定できます。)

 さて、わかりやすく説明するために64次の代数方程式を示しましたが正確には、「「4次方程式の根と2の平方根を添加した体の上の8次代数方程式を解き、さらにこの8次方程式の根などを添加した体の上の代数方程式の根を求める。

 ここで、「4次方程式の根と2の平方根を添加した体の上の8次代数方程式」は有理数体上の64次代数方程式になります。これらの未知数がわかれば、残りの変数はこれらの解の有理式であらわされているので簡単にわかります。」」

 こういうことを説明しておけば、数学者ならば、存在証明の方針を納得できるでしょう。   (関口次郎)

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