■平行体の体積とグラミアン(その84)

 今回のコラムでは(その83)で取り上げなかった正単体と正軸体の非分解合同性について考えてみる.

  正n+1胞体 → cosδa=1/n,sinδa=√(n^2−1)/n

  正2n胞体 → cosδb=0,sinδb=1

  正2^n胞体 → cosδc=−(n−2)/n,sinδc=2√(n−1)/n

 正単体と正軸体の非分解合同性の関係式は

  N1δa+N2δc≠0  (mod π)

と書くことができる.

===================================

  u=1/n+√(n^2−1)/ni

  v=i

  w=−(n−2)/n+√(n−1)/ni

とおく.|u|=1,|v|=1,|w|=1

 u=1/n+i√(n^2−1)/nについては,

  u−1/n=i√(n^2−1)/n

より,uは2次方程式nu^2−2u+n=0の解である.

  nu^2=2u−n

  n^2u^3=2nu^2−n^2u=2(2u−n)−n^2u

      =(4−n^2)u−2n

帰納法により

  n^m-1u^m=a1u+b1   (a1≠0,b1=0 mod n)

を示すことが出来る.

 同様に,w=−(n−2)/n+2√(n−1)/niについては,

  w+(n−2)/n=i2√(n−1)/n

より,wは2次方程式nw^2+2(n−2)w+n=0の解であり,

  n^m-1w^m=a2w+b2   (a2≠0,b2=0 mod n)

がいえる.

 ここで,複素数の積

  Z=n^N1-1u^N1・n^N2-1w^N2

を考える.複素数の掛け算は偏角の足し算に対応し,実数n^N1-1,n^N2-1の偏角はすべて0であるから,Zの偏角

  Arg(Z)=Arg(u^N1・w^N2)=Arg(u^N1)+Arg(w^N2)

がnπにならないこと,すなわち,u^N1・w^N2の虚部

  Im(u^N1・w^N2)

が0にはならないことがいえればよいことになる.

 結局

  Z=(a1u+b1)(a2w+b2)=Re+Imi

  Im≠0

  a1≠0,b1=0   (mod n)

  a2≠0,b2=0   (mod n)

に帰着されれば,N1δa+N2δcは有理係数で線形独立であり,正単体と正軸体の非分解合同性という結論が主張できることになる.

  Im=√(n−1)/n^2{2a2(a1+b1n)+a1(−a2(n−2)+b2n)√(n+1)}

と展開され,Im≠0ならば,正単体と正軸体の非分解合同性がいえるが,√(n+1)が整数のとき,すなわち,

  n=8,15,24,35,48,63,80,99,120,・・・

などでは,分解合同可能性があることになる.

 8次元,24次元という数字にどのような意味があるかというと,実はこの2つの次元はかなり特別な意味をもっていて,高度に対称的な格子状配置になっているため接吻数(τ8=240,τ24=196560)が計算できる特殊な次元なのである.実際に,8次元空間ではδ1+2δ2=360°に対応する空間充填形を2個の正軸体と1個の正単体を組み合わせて構成することができる.

===================================

 1種類の正多胞体による空間充填形をまとめると,平面充填形3種類(正三角形,正方形,正六角形),3次元空間充填形1種類(立方体),4次元空間充填3種類(8胞体,16胞体,24胞体),5次元以上の空間充填形は1種類(超立方体)ということになります.

 もし,複数使ってよければ,3次元では正四面体と正八面体の組み合わせ,8次元では8次元正単体と8次元正軸体を組み合わせたものだけが空間を充填します.4次元の正5胞体+正16胞体+正600胞体も二面角の和が2πですか,これは空間充填形ではありません.

 5次元以上の空間では,直角三角錘RNを2^n-1個を取り除くと正多面体にならず,1種の準正多面体になるので,8次元の場合だけが問題となるのですが,

  17280×正単体+2160×正軸体→超立方体ではない亜正多面体

となって,超立方体には解体再編されません.よって,正単体と正軸体の非分解合同性が確定するのです.

===================================