■ガウスの測量(その3)

 任意の直線とその直線上にない点について

[1]平面上ではその点を通る平行線は1本だけ存在する.

[2]球面上ではその点を通る平行線は1本も存在しない.

[3]双曲面上ではその点を通る平行線は無限の存在する.

このように平行線公準が成り立たない幾何学が矛盾なく存在することがわかっている.

 そして,非ユークリッド幾何学の理論を支える最も重要な概念が空間の曲率で,曲率を理解する最も簡単な方法が,三角形の内角の和

  曲率ゼロ  α+β+γ=π,

  正の曲率  α+β+γ>π,

  負の曲率  α+β+γ<π

である.

 ある幾何学が他の幾何学より正しいということはあり得ないが,都合がいいということはあり得る.たとえば学童は定規とコンパスを使うからユークリッド幾何学が最適,飛行機のパイロットには球面幾何学が最適だ.それでは双曲面幾何学は誰にとって最適なのだろうか?

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 物理学者も自分の目的に最も合う幾何学に関心を抱く.ニュートン物理学では宇宙をユークリッド幾何学の成り立つ曲率ゼロの平坦なものと想定した,それに対して,アインシュタインの一般相対性理論では,曲率非零の湾曲したものと想定した,そして,1919年,日食中の太陽の裏側に隠れた恒星を撮影することによって湾曲した空間の存在が実証されたのである.

 宇宙のかたちは曲率ゼロの平面か曲率正の球面であるとの見方が支配的である一方,曲率負の双曲面である可能性も残っている.双曲面は最小の体積で最大の表面積を実現してくれる.

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