■夏目漱石「夢十夜」(その3)

 昨日,一昨日と秋山仁先生とご一緒した.彼は研究者を志す若者から「こんなすごい定理を発見した」とか「ノーベル賞級の研究をするにはどこの大学がよいか」という手紙をよくもらうそうである.

 秋山先生は「自分はすごいことをやっている」だとか「やってみせる」とかいう気負った妄想をまず捨て去ること.そして謙虚にかつ貪欲な好奇心で探求を続けることをアドバイスするそうである.

 鎌倉の仁王像を彫った彫り師・運慶の態度を眺めていたひとりの若い男が「あれは大木の中に埋もれていた仁王像を取り出すだけだ」と語った話は, 数学的真理はあらかじめ存在しており,発明されるのではなく,発見されるのだという喩え話としてつとに知られている(夏目漱石「夢十夜」).

 英単語のdiscover(発見する)は覆っていたもの(cover)をはがす(dis-)ということで,私たちも年齢を問わず先入観を捨て,好奇心をたぎらせれば日常の身近なところに多くの発見をすることができるのである.

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