■夏目漱石「夢十夜」

 運慶は護国寺の山門で仁王を刻んでいるのだが,わいわいいっている見物人の評判には委細頓着なしに鑿と鎚を動かしている.鑿と鎚の使い方がいかにも無造作であった.

 この態度を眺めていたひとりの若い男が「あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない.あの通りの眉や鼻が木の中に埋まっているのを鑿と鎚の力で掘り出すのみだ.まるで土の中からを石を掘り出すようなものだからけっして間違うはずはない」といった.

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 数学的真理はあらかじめ存在しており,発明されるのではなく,発見されるのだという喩え話によく引き合いに出されるものであるが,出典がわからない.

 秋山仁先生もわからないという.そこで,博識で知られる阪本ひろむ氏に訊ねてみたところ,間髪を入れず,

  夏目漱石「夢十夜」

と返ってきた.

 なお,秋山仁先生は彼とのリンク(共著論文)は私のエルデシュ数を3にしたと教えてくれた.

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