■ピックの公式のn次拡大(その2)

  [参]ベック,ロビンズ「離散体積計算による組合せ数学入門」シュプリンガー・ジャパン

には立方体,直角三角錐,正軸体(十字多面体),四角錐の離散体積とその母関数も掲載されているので,紹介したい.

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【1】直角三角錐の離散体積とその母関数

 単位直角三角錐をΔで表す.それをt倍伸長させた立体がtΔである.tΔの離散体積は

  L(t)=#(tΔ∩Z^n)=(1/(1−z)^n+1z^t)の定数項

ここで,1/(1−z)^d+1=Σ(n+k,n)z^kであるから,

  L(t)=(n+t,n)

とnとtに関して対称な形に書くことができる.

 第1種スターリング数は有限母関数

  x(x−1)・・・(x−n+1)=Σ(m=0,n)S(n,m)x^m

を通して定義されるが,第1種スターリング数を用いて

  L(t)=1/n!Σ(-1)^n-kS(n+1,k+1)t^k=(n+t,n)

と書くこともできる.

 また,L(t)の母関数は

  1+ΣL(t)z^t=1/(1−z)^n+1

である.

 4点(0,0,0),(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)を頂点とする三角錐のn拡大の格子点の個数は,

  Ln=(n+1)(n+2)(n+3)/6

となる.

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【2】正軸体の離散体積とその母関数

 正軸体の離散体積は

  L(t)=Σ(k=0,d)(n+k,n)(t−k+n,n)

=Σ(k=0,min(n,t))2^k(n,k)(t,k)

とnとtに関して対称な形に書くことができる.

 その母関数は

  1+ΣL(t)z^t=(1+z)^n/(1−z)^n+1

である.

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【3】立方体の離散体積とその母関数

 単位立方体を□で表す.それをt倍伸長させた立体がt□である.t□の離散体積は

  L(t)=#(t□∩Z^n)=(t+1)^n

と書くことができる.

 また,L(t)の母関数は,オイラー数を用いて

  1+ΣL(t)z^t=1+Σ(t+1)^nz^t=ΣA(n,k)z^k-1/(1−z)^n+1

と書くこともできる.

 A(n,k)は{1,2,3,・・・,n}の置換で,その上昇集合がk−1個の要素をもつものの数である.

  ΣA(n,k)=n!

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【4】四角錐の離散体積とその母関数

 n−1次単位立方体を底面とし,(0,0,,・・・,0,1)を頂点とするn次元四角錐を考えると,伸長多面体の離散体積は

  L(t)=Σ(k=0,t+1)k^n-1=(Bn(t+2)−Bn)/n

と書くことができる.ここで,Bn(x)はベルヌーイ多項式,Bnはベルヌーイ数である.Bn=Bn(0)である.

 また,L(t)の母関数は,オイラー数を用いて

  1+ΣL(t)z^t=1+Σ(t+1)^nz^t=ΣA(n-1,k)z^k-1/(1−z)^n+1

と書くことができる.

 5点(0,0,0),(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1),(1,1,0)を頂点とする四角錐のn拡大の格子点の個数は,

  Ln=(n+1)(n+2)(2n+3)/6

となる.

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【5】離散体積から連続体積へ

 母関数

  (hnz^n+hn-1z^n-1+・・・+h1z+1)/(1−z)^n+1

に対して,連続体積

  volP=(hn+hn-1+・・・+h1+1)/n!

が成り立つ.

 したがって,直角三角錐では1/n!,正軸体では2^n/n!,立方体では

  ΣA(n-1,k)=(n−1)!

より1/nとなる.

 n=3の場合,「陽馬」と呼ばれる四角錐は単位立方体の3等分体で,体積1/3というわけである.

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【6】格子多面体の離散体積

 単位立方体のn拡大では

  Ln=(n+1)^3=n^3+3n^2+3n+1

 n=−1では

  L-1=−n^3+3n^2−3n+1=−(n−1)^3

となり,これは内部の格子点の個数は(n−1)^3であることを主張するものである.

 一般に,凸格子多面体Pは,L個の格子点,I個の内部格子点,B=L−I個の境界格子点をもち,体積Vとする.このとき,Pのn拡大体の格子点の個数は

  Ln=Vn^3+((L−1)/2−1)n^2+((L+1)/2−V)n+1

となる.

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