■4次元正多胞体の包含関係(その4)

  Coxter, Regular Polytope (改訂版, Dover, 1973)

における包含関係の説明はすこぶるわかりにくいものであるが,それは

[1]記号の意味が難解

[2](冗長ゆえか)計算結果が省略されている

ためであろう.

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 たとえば,p287の記述

  {533}[120α4]{335}

は,4次元の正5胞体α4が正120胞体{533}および正600胞体{335}に内接する(さらにその600個,120個の頂点を5個ずつうまく結ぶと120個,24個の正5胞体の複合多胞体ができる)という意味と思われます.

 そしてさらに,正600胞体の自己同型変換群が正5胞体の自己同型変換群(群としては5次の対称群,ただし裏返しを許さなければ5次の交代群)を含むことを硫黄としていると思います.

[付記]多面体Aが多面体Bを内接するというだけで,Aの自己同型変換群がBの自己同型変換群を含むとは限りません.典型的な1例は正十二面体が立方体を内接するからといって「正十二面体群(正二十面体群)が正六面体群(正八面体群)を含む」というのは誤りです.この自明に近い誤り(?)がヒルベルト・コーン・フォッセンの「直観幾何学」に載っていた!というのが大先生の早とちりの例としてよく挙げられています.

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 次のアダマール行列(±1を成分とする直交行列)についてはたぶん次のような意味と思います.

 これらの(7次元,8次元の)複合多面体は(おそらく)8次元のアダマール行列と関係がある(構成にそれを補助に使う).未解決問題は「任意の4の倍数に対して,その大きさのアダマール行列が存在するか」です.それ自体は未解決ですが,この場面はおそらくそのような一般次数のものまで必要なく,既に存在が既知の8次(もしかするともう少し先の12,16など)のアダマール行列を活用する,と思われます.

 したがって,単なる可能性を示しただけではない(ただし逆にその種の複合多面体の研究が一般のアダマール行列の存在の研究に対してヒントを与えるものではない)と思います.   (一松信)

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