■4次元正多面体の怪(その7)

 超立方体の頂点をひとつおきにとると別の正多面体になるのは3次元・4次元の特殊性である(5次元以上の空間では正多面体ではなく,1種の準正多面体になる).

  2^n=2・2n → 4次元超立方体の頂点をひとつおきに結べば,正16胞体ができる.

  2^n=2・(n+1) → 3次元立方体の頂点をひとつおきに結べば,正4面体ができる.

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 5次元以上で,超立方体(頂点数2^n),正軸体(頂点数2n),正単体(頂点数n+1)の3種類のn次元正多胞体の包含関係を調べるために,頂点数の整除性をみるのはどうだろうか?

[1]超立方体と正軸体

  2^n=k・2n

の形でなければならないことがわかる.kn=2^n-1より,nは(kも)2^mの形でなければならない.nは偶数.

[2]超立方体と正単体

  2^n=k・(n+1)

n+1は(kも)2^mの形でなければならない.nは奇数となり[1]と矛盾する.よって,n(≧5)次元超立方体は万有正多面体とはなり得ない.

[3]正軸体と正単体

  2n=k・(n+1),k≧2

より,(任意のn次元において)包含関係が成立することはあり得ない.

 実はこの議論は正しくない.正α胞体に正β胞体が含まれる場合,両者の包含関係は頂点数の整除性によって決定されるとしたのは早とちりなのである.たとえば,正12面体(頂点数20)の中に立方体(頂点数8)を内接させることはできるが,20は8で割り切れない.

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【1】証明

 そこで,対角線の長さを求めてみることにした.

 外接級の半径を√nとした場合,正2n胞体の対角線の長さは√4kで与えられる(k=1〜n).正2^n胞体の対角線の長さがこのいずれかに等しくなるのは2n=4kのとき,すなわち,偶数次元のときである.

 一方,正n+1胞体の対角線の長さが正2n胞体の対角線のいずれかに等しくなるのは2(n+1)=4kのとき,すなわち,奇数次元のときである.

 故に,正2n胞体は万有多胞体ではなく,万有多胞体は存在しない.これもほぼone sentence proofといってよいであろう.

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【2】雑感

 正多胞体甲の頂点をうまく結んで,同じ次元の正多胞体乙ができても,必ずしも甲の全頂点をうまく分けて乙の族のどれかに分割できるとは限りません.

 実際,正12面体(頂点数20)>正六面体(頂点数8),4次元の正120胞体(頂点数600)>正8胞体(頂点数16)はそうなっています.だから,頂点数が約数になっていなくても別に矛盾ではないと思います.正8胞体の頂点数16が正120胞体の頂点数600の約数でないから,正120胞体は正8胞体を含まないとまじめに書いた本もありましたが,少々早合点?

 他方,5次元以上で4次元の正120胞体のような「万能正多胞体」が存在しないことも既知の結果です.むしろ3次元,4次元の場合が例外的かもしれません.

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