■θ/πは無理数である(その5)

 普段使っている三角定規には2種類ある.辺の長さの比1:1:√2と1:√3:2であるが,角度は30°,45°,60°と何かと都合がよい.それに対して,ピタゴラス三角形は辺の長さは整数であるが,角度は簡単にはならない.

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【1】ピタゴラス三角形

 直角三角形では斜辺をc,他の二辺をa,bとすると,ピタゴラスの定理「a^2+b^2=c^2」が成り立つことはよく知られています.特に,三辺の長さが整数である直角三角形をピタゴラス三角形といいます.3元2次の不定方程式a^2+b^2=c^2の整数解を求める問題をピタゴラスの問題といいますが,(a,b,c)=(3,4,5),(5,12,13),(8,15,17),・・・などがその解です.

 ピタゴラス三角形は無限にあり,その一般形にはいくつかの変形がありますが,m,nを整数,kを相似係数として

  a=k(m^2−n^2),b=2kmn,c=k(m^2+n^2)

が形も簡単で広く用いられています.

[Q]不定方程式:x^2+y^2=z^2,(x,y,z)=1はx,yのどちらか一方が2uv,他方がu^2−v^2の形で,zがu^2+v^2の形をしているとき,そのときに限り満足されることを証明せよ.ただし,(u,v)=1でuvは偶数.

[A]x^2+y^2=z^2が成立したとすれば,x,yのいずれかは偶数でなければならない.xがそうだとすれば

  (x/2)^2=(z+x)/2・(z−x)/2

しかも((z+x)/2,(z−x)/2)=1.ゆえに,

  x/2=uv,(z+x)/2=u^2,(z−x)/2=v^2

となる整数u,vが存在する.

 すべてのピタゴラス数が,

  x=2uv,y=u^2−v^2,z=u^2+v^2

のように表されることは,x^2+y^2=1上のすべての有理点が

  (2t/(1+t^2),(1−t^2)/(1+t^2))

であることによっている.

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【2】θ/πは無理数である

 ピタゴラス三角形のひとつの鋭角をθをする.θ/πは無理数である.

(証)

  a=(m^2−n^2),b=2mn,c=(m^2+n^2)

θ/πが有理数だとして矛盾を導くことにするが,回転行列Rは

  R=[cosθ,−sinθ]=[a/c,−b/c]

    [sinθ, cosθ] [b/c, a/c]

 点P=(c^n,0)とおいて,次のn点

  P,ρ(P),ρ^2(P),・・・,ρ^n-1(P)

を考えると,これらはすべて異なる格子点である.ところが,Z^2で格子正n角形は正方形に限る→コラム「格子点についての問題(その2)」参照.θ<π/2であるから,これは不可能である.

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