■和算と算額(その41)

  a^2+b^2−2ab

  a^3+b^3+c^3−3abc

  a^4+b^4+c^4+d^4−4abcd

さらに高次元化した

  a^5+b^5+c^5+d^5+e^5−5abcde

  a^6+b^6+c^6+d^6+e^6+f^6−6abcdef

などが,本質的に算術平均A(a^n)と幾何平均G(a^n)の差となっていることは,このコラムの読者であれば既におわかりであろう.

 ここで,受験参考書に必ず書いてある

  a^3+b^3+c^3−3abc

 =(a+b+c)(a^2+b^2+c^2−ab−bc−ca)

 =(a+b+c){(a−b)^2+(b−c)^2+(c−a)^2}/2

という公式を思い出してもらいたい.

 これらの2次,3次の同次式

  a^2+b^2−2ab=(a−b)^2

  a^3+b^3+c^3−3abc=(a+b+c){(a−b)^2+(b−c)^2+(c−a)^2}/2

を並べて書くと,両者とも右辺には多項式Pkを重みとする平方の和の形

  ΣPk(ai−aj)^2

が現れていることに気づかされるだろう.前者ではPk=1,後者ではPk=(a+b+c)/2となっているというわけである.

  a^4+b^4+c^4+d^4−4abcd

は因数分解不可能であることがわかっていて,そのため,受験参考書には決して登場しないのであるが,それではせめて多項式の平方の和の形に表せないだろうか.

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【1】フルヴィッツ・ムーアヘッドの等式

 実は,算術平均A(a^n)と幾何平均G(a^n)については,フルヴィッツ・ムーアヘッドの等式

  n{A(a^n)−G(a^n)}

 =1/2(n−1)!{Σ(a1^(n-1)−a2^(n-1))(a1−a2)+Σ(a1^(n-2)−a2^(n-2))(a1−a2)a3+Σ(a1^(n-3)−a2^(n-3))(a1−a2)a3a4+・・・}

の成り立つことが知られている.右辺はa1,a2,・・・,anを置換して得られる値の総和である.

 また,このことから

  A(a^n)≧G(a^n)

の別証明が得られる.

  Σ(a1^(n-1)−a2^(n-1))(a1−a2)+Σ(a1^(n-2)−a2^(n-2))(a1−a2)a3+Σ(a1^(n-3)−a2^(n-3))(a1−a2)a3a4+・・・

 =ΣP1(a1−a2)^2+ΣP2(a1−a2)^2+ΣP3(a1−a2)^2+・・・

 =Σ(P1+P2+P3+・・・)(a1−a2)^2

 =ΣP0(a1−a2)^2≧0

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【2】レムスの不等式(1820年)

 三角形の3辺の長さを(a,b,c)とするとき,

  abc≧(a+b−c)(b+c−a)(c+a−b)

が成り立つ.等号はa=b=cのときに限る.

(証)a+b−c=2x,b+c−a=2y,c+a−b=2zとおくと,

  a=z+x,b=x+y,c=y+z

  abc≧(a+b−c)(b+c−a)(c+a−b)

は算術・幾何平均の不等式

  (x+y)/2・(y+z)/2・(z+x)/2≧√xy√yz√zx=xyz

そのものに帰着される.

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【3】対称式の問題

 ここで,a,b,c,・・・はすべて正であると仮定したが,算術平均と幾何平均の大小関係については有名な不等式

  A(a^n)≧G(a^n)

が成り立つので,n変数のn次正定値形式に関する問題であるし,また,基本対称式に関係した問題ということにもなろう.

 レムスの不等式も,3次対称式

  a^2b+ab^2+b^2c+bc^2+c^2a+ca^2−6abc≧0

である.対称式を

  Σx,Σx^2,Σx^3,Σxy,Σx^2y,・・・

などで表すことにすると,レムスの不等式は

  (Σx)(Σxy)−9xyz≧0

となる.

 ここでは,n変数で3次以下の対称多項式Pn(x,y,z)が非負となるための条件を考えてみる.

[1]P1(x,y,z)=λΣx → λ≧0

[2]P2(x,y,z)=λΣx^2+μΣxy → λ≧0,λ+μ≧0

[3]P3(x,y,z)=λΣx^2+μΣxy+3νxyz → λ≧0,λ+μ≧0,λ+2μ+ν≧0

[4]n≧4となると必要十分条件は複雑になることは冒頭で述べたとおりである.

[参]大関清太「不等式」共立出版

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