■シンク関数の数学的諸性質(その8)

【1】シンク関数の無限積表示

 任意のxに対して,無限積公式

  sinx/x=cosx/2cosx/4cosx/8・・・

も示しておこう.

(証明)

  sinx=2sinx/2cosx/2

      =4sinx/4cosx/4cosx/2

      =8sinx/8cosx/8cosx/4cosx/2

       ・・・・・

      =2^nsinx/2^ncosx/2^n・・・cosx/2

 書き直すと

  sinx=x[sin(x/2^n)/(x/2^n)]cosx/2・・・cosx/2^n

 ここで,n→∞のとき,

  sin(x/2^n)/(x/2^n)→1

であるから,sinxの無限積表示

  sinx=xΠcosx/2^n

      =x(1−x^2/π^2)(1−x^2/4π^2)(1−x^2/9π^2)・・・

が得られる.

 この結果は,sinxがx=0,±π,±2π,±3π,・・・のとき,0になることに一致している.シンク関数

  sinx/x=0

の解が±π,±2π,±3π,±4π,・・・となることを利用して,無限積表示すると

  sinx/x=(1-x^2/π^2)(1-x^2/4π^2)(1-x^2/9π^2)(1-x^2/16π^2)・・・

     =Π(1-x^2/k^2π^2)

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【2】シンク関数とゼータ関数

 sinxの代わりに,sin√xを考える.零点は

  x=0,π^2,4π^2,9π^2,・・・

なので,関数

  f(x)=sin√x/√x

の零点は

  x=π^2,4π^2,9π^2,・・・

 また,

  f(x)=1−x/6+x^2/120−・・・

 =(1−x/π^2)(1−x/4π^2)(1−x/9π^2)

ここで,xの係数を比較すると

  ζ(2)=π^2/6

となる.

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【3】おまけ

 素数をわたる無限積

  Πp^2/(p^2−1)=4/3・9/8・25/24・49/48・・・=π^2/6

が成り立つ.

 なぜならば,オイラー積より

  Πp^2/(p^2−1)=Π1/(1−1/p^2)=π^2/6=ζ(2)

 ついでながら,すべての素数をわたる無限積

  Π(p^2+1)/(p^2−1)=5/3・10/8・26/24・50/48・・・=5/2

が成り立つ.

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