■行列式と永久式(その2)

 n次の行列式(determinant)はn個の項の積のn!個の項に適当な符号をつけた和として表される.符号をつけずに全部+にして加えた式はpermanentと呼ばれる.訳語はないが,強いて訳せば永久式である.

 今回のコラムでは,永久式(permanent)の類似物を取り上げる.

===================================

【1】リー・ヤンの定理

  X={1,2,3,・・・,n}

  A={集合Xのr元からなる部分集合}

  B=X−A={集合Aの補集合}

  α:集合Aの元,β:集合Bの元.

 互いに異なる整数α,β(1≦α,β≦n)に対し,絶対値が1以下の実数x(α,β)が与えられ,x(β,α)=x(α,β)を満たすとする.このとき,集合Aをわたる和

  Pr=ΣΠΠx(α,β)

を考える.

 具体的には,

[1]r=0のときAは空集合→P0=1

[2]r=1のときAはn通りあるから,1×(n−1)個の項の積のn個の項を加えた和として表される.

  P1=x(1,2)x(1,3)・・・x(1,n)+x(2,1)x(2,3)・・・x(2,n)+x(n,1)x(n,2)・・・x(n,n−1)

[2]r=2のときAはnC2通りあるから,2×(n−2)個の項の積のnC2個の項を加えた和として表される.

 また,Pn-r=Prより

  Pn=1,Pn-1=P1

が成り立つ.

 n次方程式P(z)=ΣPrz^r=0のすべての解は|z|=1になるというのがリー・ヤンの定理で,この定理でz=exp(−s)とおけば,|z|=1はRe(s)=0と同値となって,リーマン予想と同じ形式の定理になることがわかる.

 リー・ヤンの定理の証明は,

  [参]黒川信重,小山信也「リーマン予想の数理物理」サイエンス社

[補]分配関数はハミルトニアンの固有値Enを用いて,

  Z(s)=Σexp(−sEn)

一方,リ−マン関数は

  ζ(s)=Σn^(−s)

と表されるから,En=lognのときに両者は等しくなる.

===================================

【2】実例

[1]n=1のとき,P0=P1=1より

  P(z)=1+z=0

   z=−1→|z|=1を満たす

[2]n=2のとき,P0=P2=1

  P1=x(1,2)+x(2,1)

  x(1,2)=x(2,1)=xとおくと,P1=2x

  P(z)=1+2xz+z^2=0

  z=−x±(x^2−1)^1/2

  |x|≦1より,z=−x±i(1−x^2)^1/2

  |z|^2=x^2+(1−x^2)=1→|z|=1を満たす

[3]n=3のとき,P0=P3=1

  P1=x(1,2)x(1,3)+x(2,1)x(2,3)+x(3,1)x(3,2)

  P2=P1=xとおくと,P1=2x

  P(z)=1+xz+xz^2+z^3=(1+z)(1−(1−x)z+z^2)=0

  z=−1→|z|=1を満たす

  z={1−x±((1−x)^2−4)^1/2}/2

  |x|≦1より,z={1−x±i(4−(1−x)^2)^1/2}/2

  |z|^2={(1−x)^2+4−(1−x)^2}/4=1→|z|=1を満たす

[4]n=4のとき,P0=P4=1

  P1=x(1,2)x(1,3)x(1,4)+x(2,1)x(2,3)x(2,4)+x(3,1)x(3,2)x(3,4)+x(4,1)x(4,2)x(4,3)=P3=x

  P2=x(1,3)x(2,3)x(1,4)x(2,4)+x(1,2)x(3,2)x(1,4)x(3,4)+x(1,2)x(4,2)x(1,3)x(4,3)+x(2,1)x(3,1)x(2,4)x(3,4)+x(2,1)x(4,1)x(2,3)x(4,3)+x(3,1)x(4,1)x(3,2)x(4,2)=yとおく.

  P(z)=1+xz+yz^2+xz^3+z^4=0

 z^2で割り,Z=z+1/zとすると

  Z^2+xZ+y−2=0

  Z={−x±+(x^2−4(y−2))^1/2}/2

 さらに,zはz^2−Zz+1=0の2根なので,

  z={Z±(Z^2−4)^1/2}/2

 式はかなり複雑になるが,たとえばx=4,y=6のとき,Z=−2,z=−1→|z|=1を満たす

===================================

【3】実例(続き)

 以下では,一般のx(α,β)を扱うのでなく,n=4でx(α,β)=1/0の場合を扱う.α≠β,x(β,α)=x(α,β)より,4次対称行列X={x(α,β)}を

  [*,1,0,1]

  [1,*,1,0]

  [0 1,*,1]

  [1,0,1,*]

などと表現することにする.

  [*,1,1,1]

  [1,*,1,1]

  [1,1,*,1]

  [1,1,1,*]

のとき,x=4,y=6→Z=−2,z=−1→|z|=1を満たす

  [*,0,0,0]

  [0,*,0,0]

  [0,0,*,0]

  [0,0,0,*]

のとき,x=0,y=0→Z=0,z=±1→|z|=1を満たす

  [*,1,1,1]

  [1,*,0,0]

  [1,0,*,0]

  [1,0,0,*]

のとき,x=1,y=0→Z=1,−2,z=(−1±√3i)/2,−1→|z|=1を満たす

  [*,1,1,1]

  [1,*,1,1]

  [1,1,*,0]

  [1,1,0,*]

のとき,x=0,y=1→Z=±1,z=(±1±√3i)/2→|z|=1を満たす

  [*,1,0,0]

  [1,*,1,0]

  [0,1,*,1]

  [0,0,1,*]

のとき,x=1,y=1→Z=0,−2,z=±i,−1→|z|=1を満たす

===================================