■和算と算額(その26)

 (その18)以降,

[Q]与えられた△ABCの各辺を伸長した位置に点A’,B’,C’をとって作った△A’B’C’がもとの△ABCと同じ向きに相似相似になっている.

  A’B’=3寸,B’C’=6寸,A’C’=4寸,AA’+BB’+CC’=5寸のとき,CC’の長さを求めよ.

という問題を扱ってきたが,もとの三角形と裏返しに相似になるような問題を作ってみることにしよう.

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  a^2=b^2+c^2−2abcosA

  b^2=c^2+a^2−2cacosB

  c^2=a^2+b^2−2abcosC

 相似比をkとすると

  (kb)^2={(λ−1)a}^2+(μb)^2+2(λ−1)μabcosC

  (kc)^2=|(μ−1)b}^2+(νc)^2+2(μ−1)νbccosA

  (ka)^2={(ν−1)c}^2+(λa)^2+2(ν−1)λcacosB

であったが,裏返しに相似なとき,右辺の式はそのままにして,第1式,第2式の左辺のb,cを入れ換える.

  (kc)^2={(λ−1)a}^2+(μb)^2+2(λ−1)μabcosC

  (kb)^2={(μ−1)b}^2+(νc)^2+2(μ−1)νbccosA

  (ka)^2={(ν−1)c}^2+(λa)^2+2(ν−1)λcacosB

 これ以降,cosA,cosB,cosCを消去すると

  (kc)^2={(λ−1)a}^2+(μb)^2+(λ−1)μ(a^2+b^2−c^2)

  (kb)^2=|(μ−1)b}^2+(νc)^2+(μ−1)ν(b^2+c^2−a^2)

  (ka)^2={(ν−1)c}^2+(λa)^2+(ν−1)λ(c^2+a^2−b^2)

  k^2(a^2+b^2+c^2)=a^2{(λ−1)^2+λ^2+(λ−1)μ+(ν−1)λ−(μ−1)ν}+b^2{(μ−1)^2+μ^2+(λ−1)μ+(μ−1)ν−(ν−1)λ}+c^2{(ν−1)^2+ν^2+(μ−1)ν+(ν−1)λ−(λ−1)μ}

 これより,

  k^2(a^2+b^2+c^2)=a^2{(λ−1)^2+λ^2−2(μ−1)ν+k^2−1}+b^2{(μ−1)^2+μ^2−2(ν−1)λ+k^2−1}+c^2{(ν−1)^2+ν^2−2(λ−1)μ+k^2−1}

  a^2{λ^2−λ−(μ−1)ν}+b^2{μ^2−μ−(ν−1)λ}+c^2{ν^2−ν−(λ−1)μ}=0

 また,与えられた三角形の各辺を倍率λ,μ,νで伸縮した位置に点をとって作った三角形の面積は,もとの三角形の面積の

  μ(λ−1)+ν(μ−1)+λ(ν−1)+1

倍になるから,

  k^2=μ(λ−1)+ν(μ−1)+λ(ν−1)+1

まではまったく同じ式であるが,

  ∠CAC’=∠ABA’=∠BCB’=∠D

が成り立たない.

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 自由度を下げるためにはλ=μ=νの場合を扱うしかないと思われるが,そうであれば縮小三角形の問題と本質的に同値の問題となる.λ=2の場合を考えよう.

 三角形ABCの各辺を1:2の比に順次内分した点D,E,Fとし,AD,BE,CFの2本ずつの交点が作る三角形PQRが三角形ABCと裏返しに相似になっている.

(Q1)直角三角形の例を求めよ.

(A1)縮小三角形の相似条件式は

  a^2+λb^2−(λ+1)c^2=0

である.もちろんa=b=cはこれを満足するが,それ以外にも多数の解がある.等号を満たすためには

  a≦c≦bまたはb≦c≦a

であることが必要条件になる,

   a^2+c^2=b^2とすると(1+λ)a^2−c^2=0

   λ=2のとき,c=√3a,b=2a   (3辺の比が1:√3:2)

   b^2+c^2=a^2とすると(1+λ)b^2−λc^2=0

   λ=2のとき,c=√(3/2)b,a=√(5/2)b   (3辺の比が√2:√3:√5)

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(Q2)a,b,cがすべて整数の例を求めよ.

(A2)不定方程式

  a^2+λb^2−(λ+1)c^2=0

において,λ=2のとき,a=1,b=11,c=9がひとつの解であるが,これでは三角形にならない! a^2+2b^2=3c^2の整数解を代数幾何的(類体論的?)に求めて,二辺の和は他の一辺よりも長いかどうかを確かめる方が近道と思われる.

  (a,b,c)=(5,13,11),(5,23,19),(19,61,51),(19,71,59),(23,37,33),(25,47,41),(29,59,51),(43,97,83),(47,83,73),(53,73,67),(23,13,17),(25,11,17),(29,11,19),(47,23,33),(47,83,73),(53,37,43),(95,59,73),(95,73,81)

などが見つかるが,鋭角三角形になる例に限るとλ=2,a,b,c≦100の場合だけでも,

  (a,b,c)=(23,37,33),(25,47,41),(47,83,73),(53,37,43),(53,73,67),(73,47,57),(95,73,81)

の7組が抽出される.

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