■2002・わが闘争

 今年は40篇を超えるコラムをアップロードすることができた.未発表のものまで含めると50篇にはなるので,他人の目には多産な1年であったかに映ると思う.しかし,HPを運営・維持・管理する当の本人にとっては,常にネタ探しに追いまくられ,一種の強迫観念に駆られた神経症的な1年であった.
 
 HPは維持するには苦労が多い.
(1)ネタを考えなければならないこと
 面白いネタはそうそうころがってはいない.最近ではネタ切れのことも多く,同じネタを角度を変えて何度も使いまわしている.数学関連のHPは少なくないように見受けられるし,純粋数学ネタに関しては,ほぼ打ち止めのような気がする.
(2)周囲からの風当たり
 ここが医療機関であり,周囲の風当たりを気にしながら仕事しなければならないこと.いまHPの移転を迫られているのもそのためである.
 
 それにもかかわらず維持している理由は,
(3)このHPを通じて研究者同士のネットワークが築けること
(4)そのつきあいを通して,いま考えるべきテーマが自分自身にもフィードバックされること
(5)研究費が1円ももらえない身分で,いやしくも科学に貢献しようと思ったら,インターネットを利用せざるを得ないということ
になろう.
 
 優れた学者は論文以外の文章を書くなどということはしないものかもしれないが,私にとってはいろいろなコラムを作品化することで,かえって科学者としてのアイデンティティーを確かめ,自立再生を果たしてきた.このHPは自分にとって「アルキメデスの砂」なのだとつくづく思いしらされる今日この頃であるが,「アルキメデスの砂」は科学者としての存在証明であり,なにがなんでも維持していきたいと考えている.
 
 移転後もこれまで以上にイマジネーションとインスピレーションを発揮するつもりなので,変わらぬお付き合いをお願い申し上げる次第である.
 
===================================
 
【1】純粋数学的なるもの
 
 例年にならって,コラムの内容を分類することから始めたい.小生のコラムは仕事柄,応用数学的なものが多いのだが,純粋数学的なものも少なくはない.
 
  「ひもの棲む世界」
  「もうひとつの五角数定理」
  「リーマン計量(曲がった空間におけるピタゴラスの定理)」
  「モザイク模様とルート系」
  「最近接距離分布(ウィグナー分布)」
  「整数論小話(2次形式の数論)」
  「ヒルツェブルフの符号数定理とベルヌーイ数」
  「極大格子群とルート系」
  「無理数・代数的数・超越数」
  「微分形式・外積・外微分」
  「群と月光」
  「幾何学と数論の相互転化」
  「エルランゲン・プログラムと変換群」
  「n次元ユークリッド空間の有限合同変換群?」
  「楕円積分とガンマ関数」
  「数にまつわる話」
  「超幾何関数とゼータ関数」
  「シンク関数の数学的諸性質」
 
 このリストを見て,リー群やルート系に関するものが多いことに気付かされる.コラム「群と月光」,「n次元ユークリッド空間の有限合同変換群?」では,古典線形群とリー群について記述したが,古典線形群をすべて包括するのが単純リー群である.
 
 実数や複素数,行列は群の例である.たとえば,絶対値1の複素数
  exp(iθ)=cosθ+isinθ
は積を算法としてリー群(パラメータθを連続的に変化させることによって,無限に多くの要素を含んでいる群)となる.ところが,「群論」となると実に取っつきにくい.リー群はノルウェーの数学者リーにちなんでこの名前がある特別な群で,その定義はいくつかの条件が満たされていなければならないので,通常の群よりもずっと複雑である.
 
 リー群は数学だけでなく,物理や化学においても重要な役割を演ずる.とはいっても,わかったようでいて,いつまでもわからないというのが本音であるが,再度取り上げて概説してみたい.
 
===================================
 
 2つの図形が同じかどうかをみるために,動かして重なり具合を調べることになるが,この動かすという操作をもっと広く一般に「変換」という.どのような合同変換も,平行移動と原点を保つ合同変換との合成で表される.そして,ある図形が変換に対して形を変えず,うまく重ね合わせることができた場合,「対称」な図形であるという.
 
 幾何における対称性を記述するには,群が使われる.群とは幾何的な変換の集合から代数的な性質を取り出して定義された代数系であり,幾何学に群を積極的に応用することを最初に主張したのがクラインのエルランゲン・プログラム「空間内の距離を変えない変換は群をなす.幾何学とは変換群で不変な図形の性質を研究する分野である.」である.
 
 コラム「エルランゲン・プログラムと変換群」では,合同変換や相似変換について取り上げたが,合同変換や相似変換というのは,いわば,空間の対称性を表すための数学的な構造である.クラインは射影変換群に属する平面の幾何学から,変換群を順次縮小あるいは拡大することによってアフィン幾何学,ユークリッド幾何学,非ユークリッド幾何学を再構成してみせたのである.(affine:純化する)
 
 一方,空間の構造を表すのに,その対称性を示すリー群がよく使われる.リー群やリー環というのは,合同変換,相似変換,アフィン変換といったものを数学的にとらえたもので,背後に潜む対称性を記述するための道具といっても差し支えないであろう.
 
 以下に変換群の例を掲げるが,n×n行列からなるn次一般線形群GL(n)やn次直交群O(n)などはすべて古典線形群,したがって,リー群に含まれる.
 
 2次元の直交変換O(2)は内積を保つ変換であることから,2次元平面の原点を保つ合同変換のなす群となる.平面上の合同変換には,平行移動,回転およびある直線に関する折り返しという3種類の変換を何回か施したものとなるが,原点を保つのは原点を中心とする回転
[cosθ,−sinθ]
[sinθ, cosθ]
か,原点を通る直線x/cosθ=y/sinθに関する折り返し(対称変換,鏡映)
[cos2θ, sin2θ]=[cos2θ,−sin2θ][1, 0]
[sin2θ,−cos2θ] [sin2θ, cos2θ][0,−1]
の2種類である.それに対して,3次元の直交変換O(3)は,回転,鏡映,回転鏡映の3種類がある.
 
 n次直交群O(n)のなかで行列式が1のものがn次特殊直交群SO(n)である.SO(2)は
[cosθ,−sinθ]
[sinθ, cosθ]
すなわち,平面の原点を中心とする回転のなす群である.SO(n)はO(n)の部分群になっているが,一般に,O(n)はn次元空間の直交変換全体のなす群,SO(n)は回転運動全体のなす群である.GL,SL,Oなどは原点を動かさない変換であるが,平面や空間の合同変換群には原点を動かす元もあり,この群は直交群と平行移動を併せた群となっている.
 
 また,直交群,例えば,球の対称性を表す3次直交群O(3)を複素数体上にエルミート内積を用いて定義したものがユニタリ群Uである.複素数は2変数であるから,複素数上2次元のSU(2)は実数上4次元であって,4次元超球面と対応し,SO(4)の部分群と考えることができる.
 
===================================
 
 クラインは,平面内での正n角形を,球の赤道に内接する正n角形の各頂点と北極・南極を結んでできる多面体を上下から赤道面に押しつぶしてできる体積が0の正凸面体と考え,この群を正2面体群と命名した.2面体群とは,正n角形を回転してもとの正n角形に重ねる巡回群に対し,折り返しも用いてもとの正n角形に重ねる変換すべてを含む群となる.このように,クラインが群論によって幾何学の統合を図ったことはあまりにも有名である.
 
 クラインに続き,ドイツのキリングとフランスのカルタンのよる単純リー群(詳しくは複素コンパクト型単純リー群,古典線形群はみな含まれる)の分類の成功は幾何学にも大きな影響を与えた.
 
 ルート系の分類は,それ自体大変面白いものなのだそうであるが,既約ルート系の同型類には,AからGまでのアルファベットに,添字として階数をつけた名前が付いていて,E8型ルート系などと呼ぶ習慣になってる.以下,まったくの受け売りになるが,その物語を伝えたい.
 
 この既約ルート系の分類の基づいて,複素単純リー代数の分類を行ったものがカルタンの分類定理であり,それは『いかなる複素単純リー代数もAk(k≧1),Bk(k≧2),Ck(k≧3),Dk(k≧4),E6,E7,E8,F4,G2の型のものに限られる.』というもので,Ak,Bk,Ck,Dk型の複素単純リー代数は古典型,E6,E7,E8,F4,G2の型のものは例外型と呼ばれる.すなわち,単純リー群には9つの型があり,それらはA,B,C,Dと名づけられた4つの無限系列とE6,E7,E8,F4,G2と名づけられた5つの例外群であった.
 
 キリングやカルタンの研究は面白い幾何学がどれだけできるかという設問に対する解答でもあり,大ざっぱにいえば,A型が複素ユニタリ幾何,B型とD型がそれぞれ奇数次元と偶数次元の実ユークリッド幾何,C型が4元数上の幾何学,5つの例外型は8元数上の幾何学に対応しているということである.
 
===================================
 
 ルートとは鏡映を与えるベクトルとして理解することができる.たとえば,8次元ユークリッド空間において,8次元単体(4面体の拡張)を鏡映したものからなるモザイク模様に対してベクトルの集合を考えることによって,E8型ルート系が得られるというわけである.
 
 ルートは,半単純リー群の分類とか,特異点,正多面体の決定の際にも現れ,数学のさまざまな領域で重要な働きをする.そして,ルート系から得られた結果をもとにして,コラム「極大格子群とルート系」では2〜8次元における極大格子の格子点間距離を求めた.
 
 極大格子群の問題は「単位格子群の2つの格子点の間の最小距離dminを最大にする格子群を求めよ」というミニマックス問題であり,「同じ半径の球をできるだけ稠密詰めるにはどうしたらよいか」という空間の球による充填問題(ケプラー問題)と密接に関係している.
 
 1611年,ケプラーは3次元における球の詰め込みの最大密度は面心立方格子状配列(八百屋の店先でミカンなどの山を安定に積み上げるために使われている日常的な配置)であると予測していた.ケプラー問題は何世紀にもわたる研究にもかかわらず未解決であったが,1998年にヘールによって証明された.→「ひもの棲む世界」参照
 
 このコラムでは,最密充填構造は4次元,5次元においては面心立方格子の類似品となるが,6次元以上についてはそのようなことは成立しなくなることを述べた.次元の上昇とともに,超球の間の隙間が大きくなっていくからである.そして,8次元になると面心立方格子に十分な隙間ができるので,そこに同じ大きさの球が詰め込み可能になる.8次元や24次元は特別な意味をもった次元なのである.→「ひもの棲む世界」参照
 
 一方,配置が完全に規則的である結晶の極みにあるランダムな配置(ポアソン配置)の場合の平均距離も算出した.2〜8次元において,ランダム配置の平均距離は,均等配置の格子点間距離の半分よりは大きい,逆にいうと,均等配置距離はランダム配置の平均距離の2倍よりも小さいという結果が得られた.この結果が9次元以上でも成り立つのかどうかは不明である.
 
 結晶と完全にランダムな点の配置は対極的ではあるが,意外なことにどちらも数学的な扱いが容易な構造であった.
 
===================================
 
【2】応用数学的なるもの
 
  「格子上の確率論(その2〜その8)」
  「適合度検定をリファインする(その2)」
  「ビールの泡と多面体」
  「幾何学的不等式への招待(その1・その2)」
  「4次元・5次元を垣間みる」
  「正多面体は総計15種類ある」
  「サンゴ礁と豊饒の海」
  「楕円近似について(その1〜その3)」
  「ロボットアームと6次元楕円体(その1〜その3)」
  「地図と三角法」
  「ロボットアームとn次元直方体(その1〜その3)」
 
 コラム「格子上の確率論」は今年最も長く続いたシリーズである.横浜国大・今野紀雄先生よりご教示の特性関数を用いる再帰確率の計算法が,小生の行った初等的数え上げ法とはあまりにもかけ離れた方法だったのに大変驚かされたことによって予想外の長編となった.また,ランダムウォークの考え方を統計検定に応用した話が「適合度検定をリファインする(その2)」にまとめられている.
 
 「格子上の確率論(その6)」では1次元,2次元ランダムウォークの母関数を求めた.たとえば,1次元ランダムウォークで原点に戻るのはtが偶数の時に限られるので,2nステップのとき,左右に同じ回数nずつ移動する確率は
  u2n=2nCn/2^(2n)
で与えられる.また,u0=1,奇数回目には戻ることができないのでu2n+1=0としよう.
 
 ここで,unの母関数を
  U(t)=Σunt^n
とおくと,u2n=2nCn/2^(2n)であるから,この級数の項比は
  u2(n+1)t^2(n+1)/u2nt^2n=(n+1/2)*t^2/(n+1)
これより,級数U(t)は超幾何級数1F0(1/2,t^2)であると同定され,
  U(t)=1F0(1/2,t^2)=(1−t^2)^(-1/2)
であることがわかる.
 
 2項展開からすぐにこの関数を思い浮かべることは困難であるが,超幾何関数であると仮定すると上のようにして導き出すことができる.このように,超幾何関数は今年の隠れた主役だったわけで,「数にまつわる話」,「超幾何関数とゼータ関数」にも登場している.
 
 同様に,2次元ランダムウォークの母関数は
  U(t)=Σunt^n
とおくと,u2n={2nCn/2^(2n)}^2であるから,この級数の項比は
  u2(n+1)t^2(n+1)/u2nt^2n=(n+1/2)^2/(n+1)*t^2/(n+1)
 
 これより,級数U(t)はガウス型超幾何級数2F1(1/2,1/2,1,t^2)であると同定され,
  U(t)=2F1(1/2,1/2,1,t^2)=2/πK(t)
より第2種楕円積分となることがわかる.
 
===================================
 
 一方,1次元ランダムウォークにおいて,粒子が時刻2nではじめて原点に復帰する確率を求めるのは簡単ではない.
 
 実は,
  f2n=u2(n-1)/2n
で与えられるのであるが,ここではわからないと仮定して,fnの母関数を
  F(t)=Σfnt^n   f0=0,f2n+1=0
としよう.
 
 原点に戻って来るには,はじめてどこかで原点に戻って,その後,またn回目に戻ってくればよいので,unとfnの間には両者を結びつける重要な公式
  un=Σfkun-k=fnu0+fn-1u1+・・・+f0un
が導かれる.
 
 ここで,両辺にt^nをかけてnを0〜∞までの和をとれば,左辺からはU(t),右辺からは1+U(t)F(t)が得られるので,このことより
  U(t)=1+U(t)F(t)
すなわち
  F(t)=1−1/U(t)=1−(1−t^2)^(1/2)
が成り立つ.この展開式の定数項は0になる.
 
 これより,名目的には
  fn=(-1)^(n+1)1/2Cn     Σfn=F(1)
と表されることがわかるが,さらに式変形すると,実質的には
  fn=(2n-3)!!/(2^nn!)
ここで,(2n-1)!!=(2n)!(2^nn!)より,きれいな式
  fn=u2(n-1)/2n   (n≧1)
が導かれる.
 
 ここで,
  fn=u2(n-1)/2n
が第0項から始まるようにパラメータをずらすと,
  an=u2n/2(n+1)   (a0=1/2)
この級数の項比は
  an+1xn+1/anxn=(n+1/2)(n+1)/(n+2)*x^2/(n+1)
であるから,fnの母関数は
  a0*2F1(1/2,1/2,2,x^2)=1/2*2F1(1/2,1,2,x^2)
              =1/{1+(1-x^2)^(1/2)}
であると同定される.
 
 (その6)ではfnの母関数の導出に間違いがあったようであるが,この場を借りて訂正しておく.また,ここまでやったからにはカタラン数の母関数も求めておきたいものである.
 
===================================
 
 粒子が時刻2nではじめて原点に復帰する確率は
  f2n=u2(n-1)/2n
で与えられることがわかったが,この確率はカタラン数
  Cn=2nCn/(n+1)=1,2,5,14,42,・・・
を用いて,
  f2n=C(n-1)/2^(2(n-1))
と表される.
 
 カタラン数列
  1,2,5,14,42,132,429,1430,4862,16796・・・
のはじめの4項1,2,5,14は初項1から始まって前項を3倍して1を引いたものに一致するが,5項目以降は異なっている.
 
 カタラン数から一般項が何かを予想するのは難しいが,ここでは
  Cn=2nCn/(n+1)   (C0=1)
がわかっているものとして,母関数
  F(t)=ΣCnt^n   
を求めてみよう.
 
 この級数は,第0項:C0=1から始まるので,そのまま項比をとると
  an+1xn+1/anxn=(n+1/2)(n+1)/(n+2)*4x/(n+1)
したがって,
  F(x)=2F1(1/2,1,2,4x)=2/{1+(1-4x)^(1/2)}
      ={1-(1-4x)^(1/2)}/2x
 
  (1-4x)^(1/2)=Σ(-4)^k1/2Ck・x^k
より
  Cn=-1/2(-4)^(n+1)1/2C(n+1)
これをさらに式変形すれば,
  Cn=2nCn/(n+1)
になる.この結果,二項展開を丹念に使えば
  {1-(1-4x)^(1/2)}/2x=Σ2nCnx^n/(n+1)
が得られるはずである.試してはいないが,かなり面倒そうである.
 
 実はカタラン数に対しては,漸化式
  Cn=ΣCkCn-k-1=C0Cn-1+C1Cn-2+・・・+Cn-1C0
が成り立つので,母関数は
  F(t)=ΣCnt^n=ΣCkt^kΣCn-k-1t^n-k+1
      =F(t)・tF(t)+1
すなわち,
  tF(t)^2−F(t)−1=0
なる2次方程式を満たすことが知られている.
 
 C0=1を満足させなければならないので,複号は負号をとると,
  F(t)={1-(1-4x)^(1/2)}/2x
がでてくることを付記しておく.
 
===================================
 
 高次元幾何学は「閑話休題」の発足以来の大きなテーマとなっていて,例えば「ひもの棲む世界」や「4次元・5次元を垣間みる」は高次元幾何学を取り扱ったコラムである.
 
 コラム「サンゴ礁と豊饒の海」は,秦浩司先生(現・ハザマ技術研究所)の大気中のCO2濃度に関する研究中に派生した誤差の問題を扱ったものである.「サンゴ礁=腐界の森」という結論は,結構大きな反響があったが,そこでは,誤差はn次元直方体ではなく,本来はn次元楕円の構造になっているという統計の問題を扱った.これも高次元幾何学の例といってよいだろう.
 
 それが思わぬ方向に発展し工学の問題と結びついたのが,コラム「ロボットアームと6次元楕円体」,「ロボットアームとn次元直方体」となった.秦先生のサンゴ礁の研究がきっかけとなり,秋田大学・工学資源学部の佐々木誠先生により車いすの設計に応用されるまでの話であるが,統計的な話がいつのまにか工学的な話に変身するというストーリー展開となっている.
 
 小生は6次元楕円体が地震の振動解析にも応用できるものと考えているが,ともあれ,工学と結びついたこの分野は来年以降最も発展することが予想され,車イスの設計などに変革を迫るものとなることが期待される.
 
===================================
 
【3】その他
 
  「ダイヤモンドと多面体」
  「虹は2次曲線」
  「シャボン玉とんだ(シャボン玉の科学史)」
  「膜の研究者たち」
  「鉄砲と金平糖」
 
 「シャボン玉とんだ(シャボン玉の科学史)」では,シャボン玉の物理的性質だけでなく,数学的性質(平均曲率一定曲面)についても言及し,丸いシャボン玉がありふれていることを説明した.それにつけても「ダイヤモンドと多面体」は異色でミステリアスな内容であったとの雑感であるが,2002はまとまりのない終わりで締めくくることにしよう.
 
===================================
 
【4】おわりに
 
 2003はどこへ進もうとするのか自分にも定かではないが,わが闘争(Mein Kampf)ならぬ「わが逃走」となることだけは避けたいものである.n次元楕円とn次元直方体の工学的応用が「わが闘争」の一翼を担ってくれるものと楽しみにしている.
 
===================================