■ピタゴラスの定理の拡張(その1)

 直角三角形では斜辺をc,他の二辺をa,bとすると,ピタゴラスの定理「a^2+b^2=c^2」が成り立つことはよく知られています.特に,三辺の長さが整数である直角三角形をピタゴラス三角形といいます.3元2次の不定方程式a^2+b^2=c^2の整数解を求める問題をピタゴラスの問題といいますが,(a,b,c)=(3,4,5),(5,12,13),(8,15,17),・・・などがその解です.

 ピタゴラス三角形は無限にあり,その一般形にはいくつかの変形がありますが,m,nを整数,kを相似係数として

  a=k(m^2−n^2),b=2kmn,c=k(m^2+n^2)

が形も簡単で広く用いられています.

 各辺と空間対角線が自然数になる直方体a^2+b^2+c^2=d^2は恒等式

a=k(l^2+m^2−n^2)/n,b=2kl,c=2km,d=k(l^2+m^2+n^2)/n

で与えられます.ただし,nはl^2+m^2の約数でn<√(l^2+m^2)でなければなりません.一つの文字だけの恒等式

  n^2(n+1)^2+n^2+(n+1)^2=(n^2+n+1)^2

によっても無数に解が求まります.

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【1】整数のレンガ問題

 その次に問題になるのは,すべての辺と空間対角線と各面の対角線が自然数で表されるような直方体が存在するかどうかということです.このレンガには7つの未知数があります.

  a^2+b^2=d^2

  a^2+c^2=e^2

  a^2+b^2=f^2

  a^2+b^2+c^2=g^2

 空間対角線だけが整数でない最小のレンガはオイラーによって辺が44,117,240のものであることが示されています.

 a=240,b=44,c=117,d=244,e=267,f=125,

 g=270.60118

[注]1719年にドイツ人会計士ハルケが見つけたといわれている.

 最近まで,当該の「整数のレンガ」問題には解があるともわかっていませんでしたし,問題を解くこと自体が不可能だとも証明されていませんでした.すなわと,この問題は最近まで未解決のディオファントス問題のうち,最も難しく悪名の高いものになっていましたが,1972年,スポーンが空間対角線も整数になるものいは存在しないことを証明しました.さらに,2000年,ルーティは頂点間の距離がどれも整数になるような直方体は存在しないことを証明しました.数百年解かれず残っていた問題をやっと証明したのです.

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【2】シェルピンスキーの問題

 1962年,シェルピンスキーはすべて三角数であるピタゴラスの3つ組,

  a^2+b^2=c^2

  a=p(p+1)/2,b=q(q+1)/2,c=r(r+1)/2

は無限個存在するかという問題を提示しました.

 a=8778,b=10296,c=13530

以外にはそのような3つ組の存在は知られていません.

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【3】x^3+y^3=dz^3の解

 x^3+y^3=z^3の整数解は存在しないが,dを1以外の自然数として,x^3+y^3=dz^3の解についてはどうだろうか?

 特定のd,たとえば,d=13,16に対しては無限個の解があるが,d=3に対しては有限個の解しか存在しない.

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【4】フェルマー・カタラン予想

  a^m+b^n=c^k

  a,b,cは互いに素,1/m+1/n+1/k<1

の解か存在しない.・・・この予想はまだ証明されていないが,これまでに2^5+7^2=3^4など10個の解が見つかっている.

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【5】テイデマン予想

  a^m+d=b^n

には有限個の解しかない.この予想もまだ証明されていない.

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【6】abc予想

  a+b=c,a,b,cは互いに素

  a,b,cをそれぞれ割り切る素数の積をrとする.

  c>r^2ならば解は有限個しかない.

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