■平行体の体積とグラミアン(その30)

 実際の計算に移る前に,これまでの流れを点検し訂正や一部修正を行ってきた.今回のコラムでは,n=3の置換多面体の体積が正しく算出できるかを調べてみたい.以前に行った計算で,8枚の六角形面までの距離がh0とh2とで異なっていたからである.困ったものである.

 1次元置換多面体は線分,2次元置換多面体は正六角形,3次元置換多面体は切頂八面体である.辺の長さを1に規格化すると

  V1=1,V2=3√3/2,V3=8√2

 n次元正単体を構成するのに,全体を1次元上げるのではなく,n次元空間内の座標系でこれらを求めてみよう.

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【1】中心から各面までの距離

 切頂切稜面と中心座標

  Pn(a1,・・・,an)

  aj=√(1/2j(j+1))

の距離を求める.

 2次元正単体の場合,

  P2(1/2,√(1/12))=(a1,a2)

  P1(1/2,0)

  P0(0,0)

3次元正単体の場合,

  P3(1/2,√(1/12),√(1/24))=(a1,a2,a3)

  P2(1/2,√(1/12),0)

  P1(1/2,0,0)

  P0(0,0,0)

 切頂切稜面はPkPnに垂直で,点

  Q=(x1,・・・,xn)=(a1y1,・・・,anyn)

を通る.

PnP0=(−a1,−a2,・・・,−an)

PnP1=(0,−a2,−a3,・・・,−an)

PnPn-1=(0,・・・,0,−an)

 ファセットを定めている不等式は,

  a・x=c

で与えられる.一般に,超平面a・x=cと点x0の距離は

  |a・x0−c|/‖a‖

とくに,原点からファセットまでの距離は|c|/‖a‖となる.

 PnP0に垂直なn次元超平面が点Qを通るのだが,原点をPnに移した方が紛らわしくないので

  a=(−a1,−a2,・・・,−an)

  q=(x1−a1,x2−a2,x3−a3,・・・,xn−an)

とすると,この超平面をa・(x−q)=0,a・x=a・q=cで表すと

  c0=−(a1x1+・・・+anxn)+(a1^2+・・・+an^2)

  c0=−(a1^2y1+・・・+an^2yn)+(a1^2+・・・+an^2)

  h0=|c0|/‖a‖,‖a‖=(a1^2+・・・+an^2)^1/2

 PnP1に垂直なn次元超平面では

  a=(0,−a2,・・・,−an)

  c1=−(a2x2+・・・+xnanxn)+(a2^2+・・・+an^2)

  c1=−(a2^2y2+・・・+an^2yn)+(a2^2+・・・+an^2)

  h1=|c1|/‖a‖,‖a‖=(a2^2+・・・+an^2)^1/2

 PnPn-1に垂直なn次元超平面では

  a=(0,・・・,0,−an)

  cn-1=−anxn+an^2=−an^2yn+an^2

  hn-1=|cn-1|/‖a‖,‖a‖=(an^2)^1/2

  ‖ak‖^2=1/2(k+1)(k+2)+・・・+1/2n(n+1)=1/2(1/(k+1)−1/(n+1))=(n−k)/2(k+1)(n+1)

 これでhk=hn-k+1にはなるかどうかはわからないが,3次元正単体の場合,

  y1=x1/a1=5/6,y2=x2/a2=1/2,y3=x3/a3=0

  a1^2=1/4,a2^2=1/12,a3^2=1/24

より,

  h0=1/√24

  h1=2/√3√24

  h2=1/√24

となって,h0=h2が確かめられる.また,

  h0/h1=√3/2

となって,切頂八面体の計量と一致する.

 辺の長さを1に規格化すると

  Hk=hk/2|a1−x1|=hk/2a1|1−y1|=hk/|1−y1|

  H0=6/√24

  H1=12/√3√24

  H2=6/√24

 漸化式で,8枚の正六角形と6枚の正方形からなる切頂八面体の体積を求めると

  V3=(4V2H0+6V1H1+4V2H2)/3=8√2

となって正しい解が得られた.

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【2】まとめ

 原正多胞体の面数公式を

  Nk^(n)=n+1Ck+1

また,規格化した後のk次元面までの距離をHkとする.

 置換多面体の体積公式は

  Vn=N0Vn-1H0/n+N1Vn-2H1/n+・・・+Nn-2Vn-2Hn-1/n+Nn-1Vn-1Hn-2/n

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