■ベルヌーイのレムニスケート(その8)

【1】ケンペの万能定理

 リンク装置の一点を直線や曲線に沿って動かすとき,任意の(高次)代数曲線を描くことができる(ケンペの万能定理,1876年)・・・すなわち,尖点があってもかまわないし,いかに複雑な変化のある曲線でも描くことができます.あなたの名前をサインするリンク装置が存在するというわけです.

[補]すべての代数曲線はリンケージによって作図可能であることが示されたが,任意の連続曲線を描くことができるかどうかは未解決問題である.

[補]ケンペの証明(1876年)には欠陥があったが,証明の技術的な困難さは克服されず,2002年になってカポヴィッチとミルソンにより完全に決着した.ケンペの職業は弁護士であったが,非常に優秀なアマチュア数学者でもあった.1879年には四色定理の不完全な証明をしたことで最も有名であるが,リンク装置にまつわる話もこれによく似ている.彼の証明は間違ってはいたが,全体的な考え方は非常に聡明なものであったという.

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【2】グレブナー基底

 連結クランク上の点の軌跡は,すべて角度の和のコサインの形に書き換えることができる.

 最終的には,一般的な形の多項式

  φ(x,y)=c+Σcicos(riα+siβ+δi)

に書き直すことができるのだが,これを数式処理ソフトのグレブナー基底計算プログラムを用いて,代数曲線φ(x,y)=0として表すことができる.

 また,オイラー・フースの定理の拡張版も,連立方程式

  xicosθi+yisinθi=ci

  xi^2+(yi−ci)^2=γi^2

のグレブナー基底を計算することによって得られる.

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