■初等幾何の楽しみ(その87)

 オイラー・フースの定理を拡張する方向としては、ひとつには双心n角形のnを大きくすること,もうひとつには凸n角形の星形化を考えることである.今回のコラムでは,星形正n角形の場合を扱ってみる.

 n/m角形において,

  R/r=sec(mπ/n)

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【1】星形多角形への拡張

 

[1]星形5/2角形

[2]星形7/2角形

[3]星形7/3角形

[4]星形8/3角形

[5]星形9/2角形

[6]星形9/4角形

[7]星形10/3角形

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【2】雑感

 ここで扱ったのは同心円の場合であるが,非同心円の場合の星形n角形ではどうなるのだろうか?

 小円を大円の内部におく.大円上の点P0から小円へ接線を引き,大円と交わる点をP1とする.P1から再び小円へ接線を引き,大円と交わる点をP2とする.この2つの円の中間に次々に接する接線列を作る.たいていの場合,最後の交点は最初の点P0と重ならない.しかしときとして完全に重なる場合がある.このとき,最初の点P0をどこに選ぼうとも完全な多角形環をなす.

 ポンスレーの定理では楕円積分に帰着させる微分積分学的な証明が知られている.ベルトラン・ヤコビの証明である.この証明は周期2πは初期位置に依存しないというものであって,m回転後に初期位置に戻ってくるのであれば,周期2mπの楕円積分に置き換えればよい.すなわち,ポンスレーの定理は星形n/m角形に対しても成り立つと思われる.

 次回のコラムでは実際にそのことを確かめてみるが,微分積分学の幾何学へのひとつの注目すべき応用であろう.

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