■初等幾何の楽しみ(その74)

 これで残る問題は(3,2)=△の作図可能性ということになったが,ワイエルシュトラスのペー関数はもはや使えない.しかしながら,

  I=∫dx/(1−x^3)^1/2

は第1種楕円積分となることが示される.

 ところで,第1種楕円積分の標準形

F(k,x)=∫(0,x)1/{(1-x^2)(1-k^2x^2)}^(1/2)f(x)dx

については加法公式

  z={x(1+my^2+ny^4)^1/2+y(1+mx^2+nx^4)^1/2}/(1−nx^2y^2)

  m=−(1+k^2),n=k^2

が使える.

 そこで,積分Iに対応する半三つ葉型の中間曲線(12次曲線)

  r^(3/2)=cos(3/2θ)

  (2(x^2+y^2)^3−4x^3+3x(x^2+y^2))^2=(x^2+y^2)^3

のk等分点を求めてみようというのが今回のコラムの狙いである.

 中間曲線のグラフは半三つ葉型(緑)であるが,以下の図には実の部分(緑)に加えて虚の部分(黄)も描いてある.

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【1】第1種楕円積分の標準形への還元

 積分

  I=∫(c,1)dx/(1−x^3)^1/2

を考える.変換

  y=(λx+μ)/(νx+ρ),x=(−ρy+μ)/(νy−λ)

を適当に選ぶことにより,常に

  dy/(1+my^2+ny^4)^1/2

の形に還元できる.

  λ=−1,μ=1−√3,ν=1,ρ=−1+√3

 x=cに対するyの値を

  y1=(c−1+√3)/(−c+1+√3)

とおくと

  I=1/4√3∫(y1,1)2dy/((1−y^2)(2−√3+(2+√3)y^2)^1/2

 ここで,y^2=1−z^2,z1^2=1−y1^2とおくと第1種楕円

  I=1/4√3∫(0,z1)dz/((1−z^2)(1−k^2z^2)^1/2=1/4√3F(k,φ1)

となる.ただし,

  k=(√2+√6)/4,k^2=(2+√3)/4

  φ1=arccos((c−1+√3)/(−c+1+√3))=arcsin((1−y1^2)^1/2)

  sinφ1=z1,z1=(1−y1^2)^1/2

  c=1→z1=0

  c=0→z1=(4√3−6)^1/2=α

 これで,中間曲線の弧長を求める問題は,加法公式

  z={x(1+my^2+ny^4)^1/2+y(1+mx^2+nx^4)^1/2}/(1−nx^2y^2)

  m=−(1+k^2),n=k^2,α=(4√3−6)^1/2

の問題に還元されたことになる.

 倍角公式

  x’=2xy/(1−nx^4)=2x(1+mx^2+nx^4)^1/2/(1−nx^4)

より,2等分点に対応する楕円曲線上の点

  2x(1+mx^2+nx^4)^1/2/(1−nx^4)=α

の解をx=βとすると,

  1−((c−1+√3)/(−c+1+√3))^2=β^2

  c=√3+1−2√3/((1−β^2)^1/2+1)

が中間曲線の2等分点である.

 ここで注意しておきたいのはcは2等分点のx座標ではなく,極座標(r,θ)における動径rであるということである.

  r^(3/2)=cos(3/2θ)

  3/2θ=arccos(r^3/2)

  θ=2arccos(r^3/2)/3

  x=rcosθ=rcos(2arccos(r^3/2)/3)

  y=rsinθ=rsin(2arccos(r^3/2)/3)

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【2】中間曲線のk等分点

 阪本ひろむ氏にMathematicaで2等分点に対応する楕円曲線上の点

  2x(1+mx^2+nx^4)^1/2/(1−nx^4)=α

を求めてもらったところ,解析解

  x=−1+√3

が得られた.

 2等分点,4等分点,8等分点に対応する楕円曲線上の点と中間曲線上の点の数値解は以下の如くである.

          x     c      (x,y)

  n=2 → 0.732051 → 0.671618 → (0.531137,0.411053)

  n=4 → 0.43211  → 0.910585 → (0.856873,0.308114)

  n=8 → 0.226797 → 0.977135 → (0.962279,0.169742)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  γ^2=1+mα^2+nα^4

として,減法公式を楕円曲線:y^2=1+mx^2+nx^4上の点(x,y),(α,γ)に適用すると,反転公式は

  x’=(γx−α(1+mx^2+nx^4)^1/2)/(1−nα^2x^2)

で表される.

 反転先はそれぞれ

          x’    c      (x,y)

  n=2 → 0.732049 → 0.671621 → (0.53114,0.411053)

  n=4 → 0.891288 → 0.348665 → (0.214279,0.275049)

  n=8 → 0.934939 → 0.175156 → (0.09489,0.147226)

に移される.

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