■n次元正多面体の辺と対角線(その60)

  Σ(1,n)|P1Pj|^2m=(2m,m)n

は正しい公式であるだが,n>mであることが必要となる.したがって,6乗和公式,8乗和公式は正三角形に対しては成り立たない.8乗和公式は正方形に対しては成り立たない.

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【1】正三角形の場合

 n個の頂点を(P1,・・・,Pn)とする.三角形の場合,P1P2=P1P3=√3,Σ(1,n))|P1Pj|^2=2n=6

 頂点P1の対蹠点をP0とし,ここから3頂点P1,P2,P3までの距離の2乗和,4乗和,6乗和,8乗和,・・を考えてみよう.

  |P0P1|^2=4

  |P0P2|^2=|P0P1|^2−|P0P2|^2=1

  |P0P3|^2=|P0P1|^2−|P0P3|^2=1

  Σ(0,n))|P0Pj|^2=6=2n=6

  |P0P1|^4=16

  |P0P2|^4=(|P0P1|^2−|P0P2|^2)^2=1

  |P0P3|^4=(|P0P1|^2−|P0P3|^2)^2=1

  Σ(0,n))|P0Pj|^4=18=6n=18

  |P0P1|^6=64

  |P0P2|^6=(|P0P1|^2−|P0P2|^2)^3=1

  |P0P3|^6=(|P0P1|^2−|P0P3|^2)^3=1

  Σ(0,n))|P0Pj|^6=66>20n=60>Σ(1,n))|P1Pj|^6=54

  |P0P1|^8=256

  |P0P2|^8=(|P0P1|^2−|P0P2|^2)^4=1

  |P0P3|^8=(|P0P1|^2−|P0P3|^2)^4=1

  Σ(0,n))|P0Pj|^8=258>70n=210>Σ(1,n))|P1Pj|^8=162

 ここで,面白い事実に気づく.

  (Σ(1,n))|P1Pj|^2m+Σ(0,n))|P0Pj|^2m)/2=(2m,m)n

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【2】正方形の場合

 n個の頂点を(P1,・・・,Pn)とする.正方形の場合,P1P2=P1P4=√2,P1P3=2,Σ(1,n))|P1Pj|^2=2n=6

 頂点P1とP2の円周上の中間点をP0(1/√2,1/√2)とし,ここから4頂点P1,P2,P3,P4までの距離の2乗和,4乗和,6乗和,8乗和,・・を考えてみる.

 以下,正五角形,正六角形の場合も同様である.

  S0=(2m,m)n

  S1=Σ(1,n))|P1Pj|^2m

  S2=Σ(0,n))|P0Pj|^2m

(S1+S2)/2=S0は常に成り立つのだろうか?

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【3】正二角形

         S1      S2      S0

[1]二乗和   4      4      4

[2]四乗和   16     8      12    ○

[3]六乗和   64     16     40    ○

[4]八乗和   256    32     140   ×

[5]十乗和   1024   64     504   ×

[6]十二乗和  4096   128    1848  ×

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【4】正三角形

         S1      S2      S0

[1]二乗和   6      6      6

[2]四乗和   18     18     18

[3]六乗和   54     66     60    ○

[4]八乗和   162    258    210   ○

[5]十乗和   486    1026   756   ○

[6]十二乗和  1458   4098   2772  ×

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【5】正方形

         S1      S2      S0

[1]二乗和   8      8      8

[2]四乗和   24     24     24

[3]六乗和   80     80     80

[4]八乗和   288    272    280   ○

[5]十乗和   1088   928    1008  ○

[6]十二乗和  4224   3168   3696  ○

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【6】正五角形

         S1      S2      S0

[1]二乗和   10     10     10

[2]四乗和   30     30     30

[3]六乗和   100    100    100

[4]八乗和   350    350    350

[5]十乗和   1250   1270   1260  ○

[6]十二乗和  4500   4740   4620  ○

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【7】正六角形

         S1      S2      S0

[1]二乗和   12     12     12

[2]四乗和   36     36     36

[3]六乗和   120    120    120

[4]八乗和   420    420    420

[5]十乗和   1512   1512   1512

[6]十二乗和  5556   5532   5544  ○

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【8】まとめ

 (S1+S2)/2=S0が常に成り立つかといえばそうではなく,いわくいいがたしという結果になってしまった.4n乗和を越えると成り立たなくなるのかもしれない.

 また,この結果からいえることは,単位円に内接する正n角形(P1,・・・,Pn)があるとき,単位円上の動点Qに対しても,

  Σ(1,n)|QPj|^2m=(2m,m)n   (n>m)

となるということだろう.

 さらにそれを拡張すると,

[1]三角形QPjPj+1の面積をSjとすると

  Σ(1,m)Sj^2=一定

である.

[2]P(x,y)を次数n未満の多項式とするとき,単位円上の平均と内接正n角形の頂点での平均は等しい.

[3]P(x,y,z)を次数n未満の多項式とするとき,単位球上の平均と内接正多面体(頂点数n)の頂点での平均は等しい.

 「良い配置」とは任意の次元の半径1の球面上の有限個の点集合Kで,f(x)が2次式以下の多項式のとき,積分がKの点上の値の平均値に等しい

  ∫(S)f(x)dσ=Σf(P)/#(K)

  dσは∫(S)dσ=1と標準化した面積分

が成立する集合です.

 f(x)として,特定の頂点からの距離の2乗−定数(全体の積分が0になるように定数を選ぶ)とした場合,それを各頂点について加えた形が

  SS=v^2

に相当します.

 正多面体の頂点の集合が「よい配置」であることはかなり以前より知られていますが,正多面体でない準正多面体でも3次元の立方八面体や12面・20面体など,この性質をもつ多面体は多数あります.

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