■作図不可能な正7角形と作図可能な正5角形(その13)

 任意の三角形の3辺の中点を結ぶと,もとの三角形は合同な4つの三角形に分割される.新たに生じた三角形はもとの三角形と相似(相似比1:2)である.このように任意の三角形は自分自身と相似な4個の三角形に分けることができる.それでは・・・

(Q)5つの合同三角形に分割できる三角形は何か?

(A)辺の長さが1:2:√5の直角三角形は同形4つだけでなく,5つにも分割できる特殊な三角形である.

 どんな三角形も4,9,16,・・・,n^2個に合同分割できることは当然だが,それ以外ではどうだろう.直角をはさむ辺の長さが1:nの直角三角形は,特別にn^2+1個 にも合同分割できるわけである.

  1,4,9,16,・・・

  2,5,10,17,・・・

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【2】√5の作図

 辺の長さが1:2:√5の直角三角形は「黄金三角形」と呼ばれることもあるようだ.この図形が「黄金長方形」の作図において重要だからである.

(1)与えられた線分を1辺とする正方形を描く

(2)下辺の中点を求める

(3)下辺の中点を中心として,正方形の左上の角を通る円を描く

(4)正方形の下辺の延長線との交点から垂線を引き,正方形の上辺の延長線との交点を求める

 黄金長方形から正方形を取り除くと,残る図形は黄金長方形となる.そして,このプロセスは何度も繰り返すことができる.このような自己相似性をもつ長方形は黄金長方形だけである.

 また,黄金三角形にはほかのどんな三角形にもないユニークな特徴がある.5個組み合わせることで,相似比1:√5の大きな黄金三角形を作ることができる.√5は黄金比τ=(1+√5)/2の一部であるが,大きな黄金三角形を5個組み合わせてさらに大きな黄金三角形を作ることができる.そして,このプロセスを永遠に繰り返すと,並進対称性をもたない非周期的なタイル貼りができるのである.

[補]白銀2乗菱形の1/4の直角三角形の辺長比はa:b:c=1:2:√5であるから,黄金比

  τ=(1+√5)/2=(a+c)/b

と表せる.(あるいは黄金比は1と√5の相加平均と考えることもできるが)白銀2乗菱形それ自身を擬似黄金菱形といってよいのかもしれない.

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【3】√17の作図

 ところで,正方形の辺の2等分点を使った作図が黄金比あるいは正五角形の作図に繋がっているのですが,正17角形の作図には4等分点が使われています.

(1)直角をはさむ二辺の比が1:nの直角三角形はn^2+1等分できる.

(2)n=2のとき正五角形の作図が可能

(3)n=3のとき正十角形の作図が可能

(4)n=4のとき正17角形の作図が可能

しかし,

(5)n=5のとき正26角形の作図は可能ではない

 n^2+1と2^(2^n)+1の間には,まだまだ深遠なるギャップが存在しているというわけです.

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