■三角関数の拡張(その7)

 与えられた点をすべて通るような曲線を考えるのが補間問題(interpolation)であるのに対して,与えられた点の近くを通り,点列の状況を反映するような曲線を考えると近似問題(approximation)となる.最小2乗近似にはどういう関数系が便利だろうか.

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  (f,g)=∫f(x)g(x)dx

を内積と呼び,(f,g)=0のとき直交するという.直交関数系には三角関数系,ラーデマッヘル関数系,ウォルシュ関数系,ハール関数系などがある.また,直交多項式系として最も代表的なものはルジャンドルの多項式の他にも,チェビシェフの多項式,ラゲールの多項式,エルミートの多項式があげられる.なお,行列要素がすべて+1か−1であり,どの2行,2列をとっても直交している行列をアダマール行列と呼ぶ.

 ラプラスの方程式Δu=0を球座標で変数分離するとルジャンドルの多項式,円柱座標で変数分離するとベッセル関数が得られる.ベッセル関数は三角関数のように無限個の零点をもつ関数で,他の関数はテイラー展開(負のベキを含まない)のに対してローラン展開(負のベキも含む)であるので,直交関係自体が他の関数と事情を異にするのである.

  ∫Pm(x)Pn(x)dx=0

  ∫xJn(ajx)Jn(akx)dx=0

 弦の振動が三角関数で表されるのに対し,膜の振動はベッセル関数で表される.それに対して,球面の振動がルジャンドルの多項式というわけである.

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