■一般化されたフィボナッチ数

 パスカルの三角形の斜めの項を足すと数列

  1,1,2,3,5,8,・・・

が現れます.初項1,第2項1から始まり,隣り合う2項の和が次の項となるこの数列をフィボナッチ数列とよびます.

 黄金長方形から正方形を取り除くと一回り小さな黄金長方形が現れてきます.このことを繰り返し行えば対数らせんが現れますが,この曲線は自然界ではオーム貝などの形にみられ,自己相似的な成長過程を表す理想的な曲線とされています.サイクロイドの伸開線はそれと合同なサイクロイドですが,対数らせんの伸開線もそれと合同な対数らせんになります.

 今度は逆に1辺の長さがフィボナッチ数列の正方形をらせん状に加えていきます.最初の2つの正方形は1辺の長さが1で,そこに1辺の長さが2の正方形,引き続いて1辺の長さが3,5,8,13,21,・・・.すると,優美な対数らせんが現れてきますが,このらせんはほぼ黄金比で外に広がることになります.

 ところで,ピタゴラスの問題:a^2+b^2=c^2を拡張する方向としては,一つには未知数の個数を増すこと(a^2+b^2+c^2=d^2,あるいは一般にx1^2+x2^2+・・・+xn^2=y^2を解くこと),もう一つには指数を大きくすること(a^3+b^3=c^3 ,あるいは一般にa^n+b^n=c^nを解くこと)になります.前者の解としては,x1=−a1^2+a2^2+・・・+an^2,x2=2a1a2,x3 =2a1a3,・・・,xn =2a1anとすれば,(a1^2+a2^2+・・・+an^2)^2=y^2となります.後者は有名なフェルマーの問題でこれには整数解がないことが証明されています.

 フィボナッチ数を拡張する方向としては,一つには項数を増すこと,もう一つには初期値を変えることです.

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【1】kフィボナッチ数列

 フィボナッチ数の一般項Fn は

  Fn=Fn-1+Fn-2

です.この数列にフィボナッチ(13世紀のイタリアの数学者でピサのレオナルドとしても知られる)の名を冠したのはフランスの数学者リュカで,ハノイの塔の名で知られる2進法のパズルも1883年にリュカによって考案されたものです.

  Fn=[φ^n/√5+1/2]

 さらに,1つの項の和がその前の3つの項の和になっている

  Tn=Tn-1+Tn-2+Tn-3

で定義される数列

  1,1,1,3,5,9,17,・・・

は,フィボナッチ数列の拡張とみなせるので,フィボナッチ(Fibonacci)をもじってトリボナッチ(Tribonacci)数列と呼ばれます.

 トリボナッチ数列でも連続する2項の比はある決まった値

  1/3{3√(19+3√33)+3√(19−3√33)+1}=1.839・・・

に収束します.これは

   x^3−x^2−x−1=0

の実根です.

 テトラナッチ数列,ペンタナッチ数列,ヘキサナッチ数列,・・・はそれぞれ特性方程式

   x^4−x^3−x^2−x−1=0

   x^5−x^4−x^3−x^2−x−1=0

   x^6−x^5−x^4−x^3−x^2−x−1=0

   ・・・・・・・・・・・・・・

をニュートン法で近似計算してみると超黄金比φkが求められます.

 超黄金比φkはただひとつ存在し,

  x^k−1=(x−1)(x^k-1+・・・+x+1)

より,k→∞のときφk→2に近づくことがわかります.

 k次のフィボナッチ数は,鉄道の操車場転轍問題のなかに現れます.

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【2】リュカ数列

 初項2,第2項1のフィボナッチ数列

  2,1,3,4,7,11,18,・・・

は彼にちなんでリュカ数列と呼ばれています(1877年).

  Ln=Ln-1+Ln-2

  Ln=[φ^n+1/2]

  Ln=Fn+1+Fn-1

  F2n=FnLn

  L2n=Ln^2−2(−1)^n

  F2n+1=Fn^2+Fn+1^2

  

 リュカはフィボナッチ数列,リュカ数列を用いてメルセンヌ数(2^n−1)が素数であるかどうかを判定し,(2^127−1)が素数であることを示しています(1876年).この数は12番目のメルセンヌ素数で,1952年の13番目(2^521−1)からはコンピュータによる発見ですから,コンピュータを使わずに見つけられた最大のメルセンヌ素数になっていて,わかっている最大の素数として最長不倒記録を保ち続けました.

 フィボナッチ数列やリュカ数列の一般項は,3項漸化式:

  Fn=Fn-1+Fn-2

  Ln=Ln-1+Ln-2

の特性方程式

  x^2−x−1=0

の2つの解より,連続する2項の比は黄金比

  φ=(1+√5)/2=1.618034・・・

に次第に近づくことになります.

 すなわち,リュカ数列はフィボナッチ数列と同じ漸化式をもち,連続する2つの項比も黄金比に近づきますが,整除性に関しては多少異なります.フィボナッチ数列の整除性(mod2,3,4,・・・)の周期性については,コラム「フィボナッチ数列と有限体」で述べたのでそれを参照していただきたいのですが,フィボナッチ数では各素数pで割り切れるFnがあるのに対して,リュカ数では統計的に3つの素数のうち2つだけで,あるリュカ数Lnが割り切れます.

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