■カオスと白銀比(その2)

【1】ニュートンの方法

 非線形方程式f(x)=0の解の近似値をもとめるニュートンの方法:

  xn+1 =xn −f(xn )/f’(xn )

では,初期値x0 によって,収束,振動,発散します.

  f(z)=z^2−1

のとき,

  zn+1 =1/2(zn +1/zn )

となりますが,正の実部をもつ初期値z0の下ではz=1に,負の実部をもつ初期値z0の下ではz=−1に収束します.しかし,純虚数z0=ir0の場合は全く収束しません.

  rn+1 =1/2(rn −1/rn )

に従って虚軸上を飛び回るのです.

 たとえば,r0=τならばr1=0.5,r2=−0.5,r3=0.2916,r4=−1.56845,しかし,r0=1+√2では1,0,∞を固定点として写像されます.

  [参]シュレーダー「数論」コロナ社

によれば,この写像は虚軸上の初期値が

  非周期的な2進の有理数→固定点∞に収束

  周期的な2進の有理数 →周期的な軌道

  無理数        →非周期的な軌道

かによってかなり変わった振る舞いをし,有理数か無理数かが決定的な差になるのです.

 ニュートン法を

  f(z)=z^3−1

に適用すると

  zn+1 =(2zn^3+1)/3zn^2

となりますが,この写像はもっと変わった振る舞いをすることになり,フラクタルな境界をもちます.フラクタルとは有限の空間に無限の集合がたたみこまれたもので,ロシアのマトリョウシカ人形のように相似形が入れ子構造になっていて,拡大すると自己相似パターンが認められるものを指します.いくらでも小さいスケールで自分自身を再現するパターン,いたるところで微分不可能な連続曲線といったほうがわかりやすいかもしれません.

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【2】マンデルブロー集合とジュリア集合

 関数f(z)=z^2+kにおいて,zとkが複素数のとき,ロジスティックモデルと同様の問題はガウス平面上の複雑で美しい集合になります.

 z0 =0,zn+1 =zn +kで定義される数列が無限に発散しないような複素数kの集合がマンデルブロー集合と呼ばれ,美しいフラクタル図形を与えてくれます.

 マンデルブロー集合ではz0 を固定しkを変化させていますが,逆に,kを固定してz0 を変えたものがジュリア集合です.非線形方程式f(x)=0の解の近似値をもとめるニュートンの方法:xn+1 =xn −f(xn )/f’(xn )では,初期値x0 によって,収束,振動,発散しますが,この手続きは関数xn+1 =xn −f(xn )/f’(xn )のジュリア集合を研究することと非常に似ています.

 ジュリアは入力zとして複素数を使ったときに,発散しない条件のもとではこの反復関数が驚くべき結果を生むことに気づいた数学者の一人です.ジュリア集合の図の驚くべき美しさと複雑さは最近のコンピュータ・グラフィックスの進歩に伴って詳しくわかってきました.

 2次多項式f(z)=z^2+kが3次多項式f(z)=z^3+kになると,臨界点がただ1つではなく2つになるため,はるかに複雑になります.任意の3次多項式はf(z)=z^3+az+bに共役ですが,さらの任意の4次多項式はf(z)=z^4+az^2+bz+cに共役です.

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