■4次元正多胞体による空間充填と元素定理(その17)

 一松信先生より頂いたコメントを読んで,(その13)の証明に勘違いがあることに気づかされた.

===================================

【1】(その13)・パート2

 正軸体の重心をOとする.その頂点をP1,P2,・・・,P2nとする.PiOPj=θ(球面距離)とするとき,cosθ=0である.

 また,外接級の半径を√nとすると,ひとつの頂点からでる辺と対角線の長さと本数は

  L1=√2n,N1=2(n−1)

  L2=2√n,N2=1

である.これがn次元立方体の対角線

  Lk=2√k

と等しくなるのは,

  k=n/2

であるから,頂点(1,1,・・・,1)からでる辺を考えると,座標が

  n−k個の1,k個の−1

からなる頂点と結ばれることになる.

 たとえば,n=6のときは(1,1,1,−1,−1,−1),(1,1,−1,1,−1,−1),(1,1,−1,−1,1,−1),(1,1,−1,−1,−1,1),(1,−1,1,1,−1,−1),(1,−1,1,−1,1,−1),(1,−1,1,−1,−1,1),(1,−1,−1,1,1,−1),(1,−1,−1,1,−1,1),(1,−1,−1,−1,1,1),(−1,1,1,1,−1,−1),(−1,1,1,−1,1,−1),(−1,1,1,−1,−1,1),(−1,1,−1,1,1,−1), (−1,1,−1,1,−1,1),(−1,1,−1,−1,1,1),(−1,−1,1,1,1,−1),(−1,−1,1,1,−1,1),(−1,−1,1,−1,1,1),(−1,−1,−1,1,1,1)の合計20頂点,n=8のときは(1,1,1,1,−1,−1,−1,−1)などの合計70頂点,任意のnのときは(n,k)頂点が得られる.

 しかしながら,(n,k)個の頂点の球面距離はcosθ=0にならない.たとえば(1,1,1,−1,−1,−1)の場合,cosθ=0になるためには6個中3個の±符号を反転させなければならないが,これは前述のリストには含まれない.(1,1,1,1,−1,−1,−1,−1)の場合,8個中4個の±符号を反転させなければならないが,これも前述のリストには含まれない.任意のnのときも同様であり,このことから偶数次元立方体の頂点をどのように結ぼうともその次元の同心正軸体にはならない.

===================================

【2】誤り訂正

 n=8のときは(1,1,1,1,−1,−1,−1,−1)などの合計70頂点が得られる.このとき,頂点の球面距離がcosθ=0になるためには,8個中4個の±符号を反転させなければならないが,たとえば,

  (1,1,−1,−1,1,1,−1,−1)

  (1,1,−1,−1,−1,−1,1,1)

などは70頂点のリストに含まれる.

 だから,nが4の倍数である場合にはうまく頂点を選んで正軸体ができる場合がある.

===================================

【3】アダマール行列

 アダマール行列Hnは+1か−1の要素をもつn×n行列で,その行と列は互いに直交している.各行または列のノルム(各要素の2乗和)はnであるから,  HnHn’=Hn’Hn=nIn

が成り立つ.

 最も簡単なアダマール行列は

  H2 =[1, 1]

     [1,−1]

である.すべての他のアダマール行列はn=4kであることが必要である.

 とくに興味深いのは「直積」

  H4=H2×H2,H8=H2×H2×H2,・・・

によって,H2から得られるn=2^mのシルベスタ型のアダマール行列で,

     [1, 1, 1, 1]

  H4 =[1,−1, 1,−1]

     [1, 1,−1,−1]

     [],−1,−1, 1]

     [1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1]

     [1,−1, 1,−1, 1,−1, 1,−1]

     [1, 1,−1,−1, 1, 1,−1,−1]

  H8 =[1,−1,−1, 1, 1,−1,−1, 1]

     [1, 1, 1, 1,−1,−1,−1,−1]

     [1,−1, 1,−1,−1, 1,−1, 1]

     [1, 1,−1,−1,−1,−1, 1, 1]

     [1,−1,−1, 1,−1, 1, 1,−1]

 アダマール行列は,FFT(高速フーリエ変換)の基本原理とも関係している.

===================================