■4次元正多胞体による空間充填と元素定理(その14)

 (その13)ではn≧5の場合を扱ったので,今回はn=3,4の場合とする.

 3次元立方体の頂点をひとつおきに結べば,正4面体ができる.また,4次元超立方体の頂点をひとつおきに結べば,正16胞体ができる.実は,超立方体の頂点をひとつおきにとると別の正多面体になるのは3次元・4次元の特殊性である(5次元以上の空間では正多面体ではなく,1種の準正多面体になる).

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【1】n=3

 n次元正単体の重心をOとする.その頂点をP1,P2,・・・,Pn+1とする.PiOPi+1=θ(球面距離)とするとき,cosθ=−1/nである.

 また,外接球の半径を√nとすると,ひとつの頂点からでる辺の長さと本数は

  L1=√2(n+1),N1=n

である.これがn次元立方体の対角線

  Lk=2√k

と等しくなるのは,

  k=(n+1)/2

であるから,頂点(1,1,・・・,1)からでる辺を考えると,座標が

  n−k個の1,k個の−1

からなる頂点と結ばれることになる.

 n=3のときは(1,−1,−1),(−1,1,−1),(−1,−1,1)の合計3頂点が得られる.

 この3個の頂点の球面距離はcosθ=−1/nになる.このことから3次元立方体の頂点をひとつおきに結べば,正4面体ができることがわかる.

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【2】n=4

 正軸体の重心をOとする.その頂点をP1,P2,・・・,P2nとする.PiOPj=θ(球面距離)とするとき,cosθ=0である.

 また,外接級の半径を√nとすると,ひとつの頂点からでる辺と対角線の長さと本数は

  L1=√2n,N1=2(n−1)

  L2=2√n,N2=1

である.これがn次元立方体の対角線

  Lk=2√k

と等しくなるのは,

  k=n/2

であるから,頂点(1,1,・・・,1)からでる辺を考えると,座標が

  n−k個の1,k個の−1

からなる頂点と結ばれることになる.

 n=4のときは(1,1,−1,−1),(1,−1,1,−1),(1,−1,−1,1),(−1,1,1,−1),(−1,1,−1,1),(−1,−1,1,1)の合計6頂点が得られる.

 この6個の頂点の球面距離はcosθ=0になる.このことから4次元超立方体の頂点をひとつおきに結べば,正16胞体ができることがわかる.

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【3】雑感

 このに掲げたテーマは「格子点の問題」である.格子点についての問題は種々作ることができる.

(Q)面積nの正方形n(nは自然数)の4つの頂点がそれぞれ空間格子点Z^3に載るようにしたい.どのようなnについて可能であるか?

(A)たとえば7は3つの平方の和には書けないことからわかるように,このようなことはいつでもできるとは限らない.nが奇数の平方因子を含まないならば,この問題は座標面以外の空間格子点に載せることはできない(座標面上だったらできることもあるしできないこともある).

 n=1,2,3,4,5,6,7,8は奇の平方因子を含まないが,n=9=3^2の場合,たとえばA(−1,2,2),B(2,−1,2)とすればよい.

 この問題の高次元化はすぐ考えられる.

(Q)4次元空間に与えられた面積nの正方形をはめ込むことができるか?

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(Q)正方格子Z^2の格子点3個を選んで正三角形を作ることは可能か?

 この問題は不定方程式

  x^2+y^2=z^2+w^2=(x−z)^2+(y−w)^2

を解くことと同じである.

 一般に,どのようなnに対して正n角形が作れるかについては,正方格子の代わりに正三角形格子ではどうなるか? 立方格子では・・・? m次元格子では・・・?と発展展開させることができる.さて,答は・・・?

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