■4次元正多胞体による空間充填と元素定理(その13)

 外接球の半径が√nのn次元立方体のひとつの頂点からでる辺の長さと本数は

  L1=2,N1=n=(n,1)

  L2=2√2,N2=(n,2)

  L3=2√3,N3=(n,3)

  ・・・・・・・・・・・・・・・・

  Ln=2√n,Nn=1=(n,n)

また,n次元立方体の重心をOとする.その頂点をP1,P2,・・・,P2^nとする.PiOPi+1=θ(球面距離)とするとき,cosθ=(n−2)/nである.

 (その7)での言明は,もしn(≧5)次元立方体に内接する同心の正単体が存在するならば奇数次元のときであり,正軸体が存在するならば偶数次元のときである,故に万有多胞体は存在しない・・・という証明であった.

 今回のコラムでは,もっと強い意味の言明「n(≧5)次元立方体の頂点をどのように結ぼうとも,その次元の同心正単体・正軸体にはならない」の証明を考える.3次元,4次元の場合が例外的なのであるが,その証明は

[1]奇数次元立方体の頂点をどのように結ぼうとも,その次元の同心正単体にはならない.

[2]偶数次元立方体の頂点をどのように結ぼうとも,その次元の同心正軸体にはならない.

の2パートからなる.

[注]この証明には誤りがあり,(その16)(その19)で訂正した.

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【1】パート1

 n次元正単体の重心をOとする.その頂点をP1,P2,・・・,Pn+1とする.PiOPi+1=θ(球面距離)とするとき,cosθ=−1/nである.

 また,外接球の半径を√nとすると,ひとつの頂点からでる辺の長さと本数は

  L1=√2(n+1),N1=n

である.これがn次元立方体の対角線

  Lk=2√k

と等しくなるのは,

  k=(n+1)/2

であるから,頂点(1,1,・・・,1)からでる辺を考えると,座標が

  n−k個の1,k個の−1

からなる頂点と結ばれることになる.

 たとえば,n=5のときは(1,1,−1,−1,−1),(1,−1,1,−1,−1),(1,−1,−1,1,−1),(1,−1,−1,−1,1),(−1,1,1,−1,−1),(−1,1,−1,1,−1),(−1,1,−1,−1,1),(−1,−1,1,1,−1),(−1,−1,1,−1,1),(−1,−1,−1,1,1)の合計10頂点,n=7のときは(1,1,1,−1,−1,−1,−1)などの合計35頂点,任意のnのときは(n,k)頂点が得られる.

 しかしながら,(n,k)個の頂点の球面距離はcosθ=−1/nにならない.たとえば(1,1,−1,−1,−1)の場合,cosθ=−1/nになるためには5個中3個の±符号を反転させなければならないが,これは前述のリストには含まれない.(1,1,1,−1,−1,−1,−1)の場合,7個中4個の±符号を反転させなければならないが,これも前述のリストには含まれない.任意のnのときも同様であり,このことから奇数次元立方体の頂点をどのように結ぼうともその次元の同心正単体にはならない.

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【1】パート2

 正軸体の重心をOとする.その頂点をP1,P2,・・・,P2nとする.PiOPj=θ(球面距離)とするとき,cosθ=0である.

 また,外接級の半径を√nとすると,ひとつの頂点からでる辺と対角線の長さと本数は

  L1=√2n,N1=2(n−1)

  L2=2√n,N2=1

である.これがn次元立方体の対角線

  Lk=2√k

と等しくなるのは,

  k=n/2

であるから,頂点(1,1,・・・,1)からでる辺を考えると,座標が

  n−k個の1,k個の−1

からなる頂点と結ばれることになる.

 たとえば,n=6のときは(1,1,1,−1,−1,−1),(1,1,−1,1,−1,−1),(1,1,−1,−1,1,−1),(1,1,−1,−1,−1,1),(1,−1,1,1,−1,−1),(1,−1,1,−1,1,−1),(1,−1,1,−1,−1,1),(1,−1,−1,1,1,−1),(1,−1,−1,1,−1,1),(1,−1,−1,−1,1,1),(−1,1,1,1,−1,−1),(−1,1,1,−1,1,−1),(−1,1,1,−1,−1,1),(−1,1,−1,1,1,−1), (−1,1,−1,1,−1,1),(−1,1,−1,−1,1,1),(−1,−1,1,1,1,−1),(−1,−1,1,1,−1,1),(−1,−1,1,−1,1,1),(−1,−1,−1,1,1,1)の合計20頂点,n=8のときは(1,1,1,1,−1,−1,−1,−1)などの合計70頂点,任意のnのときは(n,k)頂点が得られる.

 しかしながら,(n,k)個の頂点の球面距離はcosθ=0にならない.たとえば(1,1,1,−1,−1,−1)の場合,cosθ=0になるためには6個中3個の±符号を反転させなければならないが,これは前述のリストには含まれない.(1,1,1,1,−1,−1,−1,−1)の場合,8個中4個の±符号を反転させなければならないが,これも前述のリストには含まれない.任意のnのときも同様であり,このことから偶数次元立方体の頂点をどのように結ぼうともその次元の同心正軸体にはならない.

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