■4次元正多胞体による空間充填と元素定理(その10)

 (その8)では,n次元立方体の頂点をk個おきに結べば,正単体や正軸体ができるかもしれないということがわかったが,実際に構成できるかどうかは別問題である.今回のコラムでは,頂点数の整除性ではなくて対角線の長さを考えて,十分条件を確認してみることにしよう.

===================================

[Q]3次元では立方体から直角三角錐RTを4個取り除くと正四面体になるが,5次元立方体からどのように取り除けばその次元の正単体になるのだろうか?

[A]5次元正16房体は32頂点(±1,±1,±1,±1,±1)を結んでできる.5次元正16房体の中心からひとつおきの頂点を結んだベクトルをとると,(1,1,1,1,1),(1,1,1,−1,−1),(1,1,−1,1,−1),(1,1,−1,−1,1),(1,−1,1,1,−1),(1,−1,1,−1,1),(1,−1,−1,1,1),(−1,1,1,1,−1)(−1,1,1,−1,1)(−1,1,−1,1,1)(−1,−1,1,1,1),(1,−1,−1,−1,−1)(−1,1,−1,−1,−1),(−1,−1,1,−1,−1)(−1,−1,−1,1,−1),(−1,−1,−1,−1,1)の合計16頂点が得られる.

 (1,1,1,1,1)を中心として,他の頂点と結んだベクトルは(0,0,0,−2,−2),(0,0,−2,0,−2)などとなる.ひとつの頂点からは(5,2)=10本のベクトルがでるが,互いに60°で交わる長さ2√2のベクトルとなる(正5胞体).頂点数は16,4次元面の形は正5胞体となる.n次元空間の正多胞体(n≧5)は3種類であるから,5次元以上の空間では芯(頂点数2^n-1)は正多面体にならず,1種の準正多面体になることがわかる.

[A]正単体の辺の長さは2√3であるから,

  L3=2√3,N3=n(n−1)(n−2)/6

より,5次元立方体の頂点を2個おきに結べば,正単体ができるかもしれない.

 (1,1,1,1,1)を中心とすると,(1,1,−1,−1,−1),(1,−1,1,−1,−1),(1,−1,−1,1,−1),(1,−1,−1,−1,1),(−1,1,1,−1,−1),(−1,1,−1,1,−1),(−1,1,−1,−1,1),(−1,−1,1,1,−1),(−1,−1,1,−1,1),(−1,−1,−1,1,1)の合計11頂点が得られる.

 すでにお気づきであろうが,n=5として合計

  (n,0)+(n,3)=11

頂点が得られたわけである.しかしながら,10頂点の頂点間距離は2√3にならない.

===================================

[Q]4次元では正8胞体からRPを8個取り除くと16胞体になるが,6次元立方体からどのように取り除けばその次元の正軸体になるのだろうか?

[A]ついでに,6次元の場合を調べてみると,6次元立方体は64頂点(±1,±1,±1,±1,±1,±1)を結んでできる.6次元立方体の中心からひとつおきの頂点を結んだベクトルをとると,±(1,1,1,1,1,1),±(1,1,1,1,−1,−1),±(1,1,1,−1,1,−1),±(1,1,1,−1,−1,1),±(1,1,−1,1,1,−1),±(1,1,−1,1,−1,1),±(1,1,−1,−1,1,1),±(1,−1,1,1,1,−1),±(1,−1,1,1,−1,1),±(1,−1,1,−1,1,1),±(1,−1,−1,1,1,1),±(1,1,−1,−1,−1,−1),±(1,−1,1,−1,−1,−1),±(1,−1,−1,1,−1,−1),±(1,−1,−1,−1,1,−1),±(1,−1,−1,−1,−1,1)の合計32頂点が得られる.これらの16本の軸は直交しない.

 たとえ8次元であっても,24次元であっても芯は正多面体にならず,1種の準正多面体になることがおわかりいただけるであろうか.

[A]正軸体の辺の長さは2√3であるから,

  L3=2√3,N3=n(n−1)(n−2)/6

より,6次元立方体の頂点を2個おきに結べば,正単体ができるかもしれない.

 (1,1,1,1,1,1)を中心とすると,(1,1,1,−1,−1,−1),(1,1,−1,1,−1,−1),(1,1,−1,−1,1,−1),(1,1,−1,−1,−1,1),(1,−1,1,1,−1,−1),(1,−1,1,−1,1,−1),(1,−1,1,−1,−1,1),(1,−1,−1,1,1,−1),(1,−1,−1,1,−1,1),(1,−1,−1,−1,1,1),(−1,1,1,1,−1,−1),(−1,1,1,−1,1,−1),(−1,1,1,−1,−1,1),(−1,1,−1,1,1,−1), (−1,1,−1,1,−1,1),(−1,1,−1,−1,1,1),(−1,−1,1,1,1,−1),(−1,−1,1,1,−1,1),(−1,−1,1,−1,1,1),(−1,−1,−1,1,1,1)の合計21頂点が得られる.

 すでにお気づきであろうが,n=6として合計

  (n,0)+(n,3)=21

頂点が得られたわけである.しかしながら,20頂点の頂点間距離は2√3にならない.

===================================