■4次元正多胞体による空間充填と元素定理(その9)

 (その8)では,n次元立方体の頂点をk個おきに結べば,正単体や正軸体ができるかもしれないということがわかったが,実際に構成できるかどうかは別問題である.今回のコラムでは,再び頂点数の整除性を考えて,十分条件を確認してみることにしよう.

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[Q]3次元では立方体から直角三角錐RTを4個取り除くと正四面体になるが,奇数次元立方体からどのように取り除けばその次元の正単体になるのだろうか?

[A]再び頂点数の整除性を考えると

  2^n=2・(n+1) → 2^n-1=n+1,n=3 → 3次元立方体の頂点をひとつおきに結べば,正4面体ができる.

  2^n=4・(n+1) → 2^n-2=n+1 → 整数解なし

  2^n=8・(n+1) → 2^n-3=n+1 → 整数解なし

 一般に,「2^nーk=n+1の整数解を求めよ(n>k)」に対してはグラフを描けばすぐに解は求まるが,この解をグラフを使わないで求めることはできるだろうか?

[1]2^n-k=n+1  (mod2)

  n>kのとき,0=n+1 → n=2m−1

  n=kのとき,1≠n+1

[2]2^n-k=n+1  (mod4)

  n>k+1のとき,0=n+1 → n=4m−1

  n=k+1のとき,2≠n+1

  n=kのとき,1≠n+1

[3]2^n-k=n+1  (mod8)

  n>k+2のとき,0=n+1 → n=8m−1

  n=k+2のとき,4=n+1

  n=k+1のとき,2≠n+1

  n=kのとき,1≠n+1

[4]2^n-k=n+1  (mod16)

  n>k+3のとき,0=n+1 → n=16m−1

  n=k+3のとき,8≠n+1

  n=k+2のとき,4=n+1

  n=k+1のとき,2≠n+1

  n=kのとき,1≠n+1

となって(NGを除去すれば)n=3,k=1(mod 2^m)であることが示される.したがって,n≧5のとき,整数解なし.

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[Q]4次元では正8胞体からRPを8個取り除くと16胞体になるが,偶数次元立方体からどのように取り除けばその次元の正軸体になるのだろうか?

[A]再び頂点数の整除性を考えると

  2^n=2・2n → 2^n-2=n,n=4 → 4次元超立方体の頂点をひとつおきに結べば,正16胞体ができる.

  2^n=4・2n → 2^n-3=n → 整数解なし

  2^n=8・2n → 2^n-4=n → 整数解なし

[1]2^n-k=n  (mod2)

  n>kのとき,0=n → n=2m

  n=kのとき,1≠n

[2]2^n-k=n  (mod4)

  n>k+1のとき,0=n → n=4m

  n=k+1のとき,2≠n

  n=kのとき,1≠n

[3]2^n-k=n  (mod8)

  n>k+2のとき,0=n → n=8m

  n=k+2のとき,4=n

  n=k+1のとき,2≠n

  n=kのとき,1≠n

[4]2^n-k=n  (mod16)

  n>k+3のとき,0=n → n=16m

  n=k+3のとき,8≠n

  n=k+2のとき,4=n

  n=k+1のとき,2≠n

  n=kのとき,1≠n

となって(NGを除去すれば)n=4,k=2(mod 2^m)であることが示される.したがって,n≧6のとき,整数解なし.

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