■4次元正多胞体による空間充填と元素定理(その8)

 3次元立方体の頂点をひとつおきに結べば,正4面体ができる.また,4次元超立方体の頂点をひとつおきに結べば,正16胞体ができる.

 実は,超立方体の頂点をひとつおきにとると別の正多面体になるのは3次元・4次元の特殊性である(5次元以上の空間では正多面体ではなく,1種の準正多面体になる).

 それでは,n(≧5)次元超立方体から適当に頂点を選べば実際に正単体,正軸体を構成することはできるのだろうか? 今回のコラムでは十分条件は後回しとして,まず,必要条件を確認してみることにしよう.

===================================

【1】正単体の場合

 正n+1胞体の対角線の長さが正2n胞体の対角線のいずれかに等しくなるのは2(n+1)=4kのとき,すなわち,nが奇数次元のときである.

  k=(n+1)/2

 このとき

  Nk=nCk≧n=nC1

であることが必要であるが,この必要条件は満たされる.

===================================

【2】正軸体の場合

 正2^n胞体の対角線の長さが正2n胞体の対角線のいずれかに等しくなるのは2n=4kのとき,すなわち,nが偶数次元のときである.

  k=n/2

 このとき

  Nk=nCk≧2(n−1)

であることが必要であるが,ウォリスの公式:

  √π〜(n!)^22^2n/(2n)!√n

  √nπ〜(n!)^22^2n/(2n)!

より,nが大きいとき

  (2k)!/(k!)^2〜2^2k/√kπ≧2(2k−1)

より,この必要条件も満たされる.

===================================